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どうも、プロアクアリストの轟元気(@ordinaryaqua)です。
本記事では 世界水草レイアウトコンテスト2021 (IAPLC2021)に出品した「コンクリ水槽の作り方」を解説します。
本水槽は「世界752位」と不甲斐ない結果に終わった水槽です。
ですが、コンクリという水草水槽に適さない素材を使い色々と工夫した水槽です。
途中、画像を撮り忘れているところもちらほらありますが、隠すこと無く技術を公開しています。
水草レイアウトに興味のある方はぜひご覧ください。
こちらが 世界水草レイアウトコンテスト2021 に出品した水槽です。
本記事ではこの水槽の制作過程をご紹介していきます。
使用した水草、水槽サイズ、使用機材、メンテナンス、水質データなどは記事後半で解説いたしますので先にご覧になりたい方は目次をご利用ください。
苦労した分、思い入れのある水槽です!
レイアウトを作る前にはまずはコンセプト決めですね。
今回は以前より使ってみたかったコンクリの廃材を使うことにしました。
アクセントとして廃材の鉄管も組み合わせて廃墟感のあるレイアウトを目指します。
緑に包まれた廃墟って素敵ですよね。
ずっとコンクリを水草水槽で使いたかったわけですが、先送りにしていたのは大きな欠点があるからです。
それは
水質を大きくアルカリ性、硬水にしてしまうこと
です。
弱酸性、軟水を好む水草はアルカリ性の水質では綺麗に育ちません。
そこで今回はコンクリを樹脂でコーティングして、「コンクリが水に溶けないように」することにしました。
結論から先に言うと、今回行ったコーティング作業だけでは不十分のようで、途中から大きく硬度が上昇して水草の育ちが極端に悪くなりました。
そこで、「軟水器」を自作して対応しています。
軟水器の作り方は別記事で詳しく解説しましたので興味のある方は、ぜひご覧ください。
さあ、それではレイアウトを組んでいきます。
まずは適当に水槽に入れて具合を見ます。
あまり使ったことの無い素材を使う場合は、必ず水槽入れてどんな雰囲気になるか確認すると良いです。
中には水槽映えしないものもありますので、肉眼、写真写り両方確認するのがベストです。
世界水草レイアウトコンテストは写真で応募するので写真写りは重要です!
仮組みが終わったら1度水槽から取り出して土台を作ります。
今回もフィルターは「外部式フィルターと底面式フィルター」を直結して使うので、まずは底面式フィルターからセットします。
コンクリブロックを積み上げるので、底面に傷がつかないようにプラスチックダンボールを敷いています。
底面式フィルターのプレートの上には底上げ用として「軽石を洗濯ネットに詰めたもの」を置きました。
手前側は「レンガ」で底上げしています。
レンガと軽石の間に微妙に隙間ができるので、「硬質赤玉土」を入れて埋めています。
底面式フィルターを外部式フィルターに接続する方法や底上げ方法は下記関連記事をご覧ください。
土台ができたら構図を組んでいきます。
水草レイアウトでは石や流木などの素材を配置することを「構図を組む」と言います。
今回は左右にボリュームを作り、中央に空間を作る「凹型構図」で作ります。
まず、鉄管を2つ配置してその上に大きめのコンクリブロックを配置。
高さを出したいので、さらに1つ増やしました。
迫力を表現する場合は「水槽の高さの半分」よりも高い位置に石や流木を配置するようにしましょう。
今回は接着剤などで固定する作業は行いませんでしたが、角度をつける場合は崩れてしまわないように接着剤で石や流木を固定したほうが無難です。
構図が組めたら一度水槽から取り出してコーティング剤をスプレーで塗ります。
スプレーした後、一晩乾かしてから二度塗りしました。
結果から見ると、3~4回くらい塗らないと水質への影響を完全に防げないかもしれません。
乾くとニスを塗ったような光沢が出てしまってちょっと不満でした。
今回は全部でスプレー缶を4本使っています!
樹脂が乾いたら水槽に戻します。
上から見るとテカテカしているのが分かりますね。
最終的にはあまり気になりませんでしたが、セット初期はテカテカ感が目立ってあまり見た目がよくありませんでした。
光沢の無いマットな感じになるタイプがあると良いですね。
ここまでできたらPH6.0に調整した水を張って水質の変化をチェックします。
3日放置してどれくらい水質が変化するか見てみましょう。
- PH 6.0 ⇒ PH7.8
- 硬度 40mg/L ⇒ 70mg/L
と、この段階ではまずまずの結果でしたので、「大丈夫だろ」の判断のもと先に進めます(徐々に硬度の上昇幅が大きくなって問題になりました)。
石は種類によって水質変化の度合いが変わります。
硬度が高くなる石ほど水草レイアウトを作るのが難しいですのでお気をつけください。
石の水質変化については別記事で詳しく解説しましたので、興味のある方はぜひご覧ください。
それでは水を抜いて底床を入れて行きましょう。
まずは背面側からソイルを入れていきます。
今回は底上げ用の軽石とコンクリ、鉄管ががっちり組み合っていたので土留をあまり使わなくてもソイルが漏れませんでした。
サイドの部分だけ農業用のマットを使い土留めにしています。
ソイルを入れたら続いて砂利、化粧砂を入れます。
砂利をソイルとの際に入れることで、ソイルが漏れるのを防ぐことができますので化粧砂とソイルの敷分けをするならやってみてください。
化粧砂を入れるとガラッと雰囲気が変わります!
- ソイル⇒「JUN マスターソイル ネクストHG スーパーパウダー」
- 化粧砂⇒「ADAコロラドサンド 4kg」
- 土留の砂利⇒「庭用の砂利」
こちらの3種類を使いました。
私の中では定番の3つです。
いろいろなシチュエーションで活躍するので重宝しています。
今回使用したソイル「JUN マスターソイル ネクストHG」は含まれる肥料のバランスが良く初心者の方にもおすすめのソイルです!
なかなか廃墟感があって良いのではないでしょうか。
ここからは小さなコンクリなどを足してさらにゴツゴツさせていきます。
大きなブロックを砕いて小さな破片を作りました。
そして、使えるかもしれないと以前集めておいたトタン板の廃材があったのでこちらも追加してみました。
小さなコンクリとトタン板もコーティング剤でスプレーしています。
できあがった構図がこちら。
石と同様にコーティング剤をスプレーしたらトタン板がピカピカになってしまいました。
トタン板は大きなコンクリの間に差し込むようにしたところ、しっかり固定できたので特に接着はしません。
さあ、これで構図の完成です。
続いて水草を植栽していきます。
たっぷりと全体に霧吹きをした後、下草系の水草+パールグラスを植えていきます。
ウォーターローンは中央奥のソイル部分に、コブラグラスは化粧砂部分に植え込みます。
ニューラージパールグラス、パールグラスは適当な大きさにちぎってコンクリの間に挟むように配置しました。
コブラグラスは手前側の小さなコンクリ片の周りに点在するように植えて、グリーンとコンクリのコントラストを出す狙いです。
後景や背の高くなる水草は植えず、まずはこちらの4種だけをミスト式で立ち上げます。
コブラグラスはコンクリの影響により硬度が高くなったタイミングで枯れてしまいました。。
- 毎日霧吹き
- 毎日換気
こちらを行いながら水草が定着するのを待ちます。
サランラップでしっかりと水槽に蓋をすることで、水草が乾燥するのを防ぐことができます。
ミスト式で水草が定着するまで管理をしてから水を張ることで、セット初期の管理をグッと楽にすることができますよ。
ミスト式については別記事で詳しく解説しましたので。興味のある方はぜひご覧ください。
ミスト式で2週間程管理をしたら後景に配置する水草を植えて水を張ります。
ミスト式は長時間行うと水草が溶けるなどの弊害が強く出ますので2週間程度(最長でも4週間)を目安にしましょう。
後景に配置するのはこちらの3種です。
どれも水草レイアウトではあまり使われない種ですが、ワイルドな見た目がコンクリに似合うかなと思い選びました。
どれも株が大きくミスト式に適さない種のため、注水直前に植えました。
下草ですがコンクリ同士の隙間が気になったのでヘアーグラスも追加しています。
本来は下草なのでミスト式で立ち上げたかったのですが、手配が間に合わなかったのでこのタイミングで植えています。
水草を植え終わったら水を張ります。
ここまで来るとレイアウトの形が見えてきましたね。
後は微調整をしながら水草を育てていくだけです。
注水1週間後の様子がこちら。
ちょっと手前側の化粧砂周りが寂しいので水草を追加しています。
トリミングしたものが余ったので前景に植えました。
本種は砂、砂利、ソイルと、この水槽の環境ならどこに配置しても育つので大体に植えていきます。
葉が大きくあまり大型化しないので、前景のワンポイントに使いやすい水草です。
無秩序に水草を追加していくのはレイアウトにおいて、あまり良いことでは無いのですがついつい追加してしまいます。
注水1ヶ月間で色々と考えた結果、今回はスマトラとマーブルグラミーの2種を泳がせることにしました。
どちらも僕の大好きなお魚なので水草が茂った中で泳ぐのを見るのが楽しみです!
お魚は水槽に入れて飼い込むことで本来の色彩がでるので、私はなるべく数ヶ月は育成して撮影に挑んでいます。
オレンジと黒のシマシマ模様が可愛らしいコイの仲間。
活発に泳ぎ回るので元気な印象の水景になります。
気分で濃淡が変わる複雑な青い模様が魅力のグラミー。気が強い種なので混泳相手を選びますが美しいお魚です。
ガチャガチャした印象になってしまったので撮影時はマーブルグラミーを水槽から待避させました。残念!
この頃より硬度が大きく上昇するようになり、ニューラージパールグラスが思うように育たなくなりました。
そこで、小石に新しいニューラージパールグラスを巻きつけて配置し直すことにしました。
多くの水草は「動かない状態をキープ」できれば成長を始めるので、同様に石に巻きつけて配置するだけでもレイアウトすることができます。
今回は小石に巻きつけたものを更にコンクリに接着剤で付けて配置しました。
DIYで作った軟水器。本水槽で大活躍しました。今後も重宝しそうです。
硬度上昇が酷いので「イオン交換樹脂」を使った軟水器を自作してカルシウム、マグネシウムを取り除き硬度を下げることにしました。
イオン交換樹脂の再生処理という手間は発生しますが硬度を確実に下げることができるので、今回のような硬度を大きく上昇させてしまう状況では重宝します。
作り方、効果などは別記事でまとめましたので、興味のある方はぜひご覧ください。
軟水器導入の少し前くらいから黒髭苔とサンゴ苔(カワモズク)が大量に発生しました。
この2種の藻類は硬度、PHが高いと発生しやすいので対処がやっかいなタイプです。
そこでシルバーフライングフォックスを5匹投入して食べてもらうことにしました。
投入後、1ヶ月程度で綺麗に食べてくれたので中々の駆除能力だと思います。
調子の悪い水草やコケ類を食害しますが、厄介な藻類を食べてくれる頼もしいやつです。
ここからは特に問題が発生していないので水草とお魚を育てていく作業です。
今回は大きくトリミングをしてキープする水草も無いので、一度安定すると管理が楽ちんです。
特に大きな変化はありませんが、じわりじわりと水草の茂みが大きくなっていますね。
時折、ハサミを入れて古い葉をカットしています。
導入時にすっかり画像を撮るのを忘れてしまいましたが「ハイグロフィラ ピンナティフィダ」と「ベトナムウォータークローバー」を追加しています。
3株程度を鉛で巻いて石の隙間に挟むようにして配置しました。
こちらもニューラージパールグラスと同様に底床に植え込まなくても育つので後から追加しやすい水草です。
思い返せばこの頃が水草のボリュームのバランスが1番良かったと思います。
時間を巻き戻せるならこのタイミングで整えて撮影をしたことでしょう。
開店準備で忙しかったというのが言い訳です!
こちらが完成カット撮影の少し前の画像です。
ここから微調整して撮影に望みます。
この辺から仕事が忙しくて微調整の様子の画像は撮り忘れました。。
さてここまで来たらもう一息です。
私は水槽の撮影はプロにお願いすることにしています。
- 撮影機材を揃える
- 撮影技術を磨く
- 撮影のストレス
こちらから開放されるのがその理由。
そして何よりも重要なのが「写真のクオリティーが段違いだ」ということです。
皆さんもこれだ!という作品ができたら依頼してみたらいかがでしょうか?
自分で撮れるのがベストですが大変なので僕はお金で解決しています!
私はいつも仕事でお世話になっている月刊アクアライフ専属カメラマン 石渡俊晴 さんにお願いしています。
プロカメラマンはたくさんいますが、レイアウト水槽を撮り慣れているプロの方はそういないと思います。
値段は張りますがいつも頼んでよかったと思えるクオリティーの写真になりますよ。
撮影のご依頼は石渡俊晴さんのTwitterアカウントからどうぞ!
色々と問題がありましたが、コンクリをメイン素材として水草レイアウトを作ることができました。
結果は752位とふるいませんでしたが、知見を深められ勉強になった水槽でした。
悔しい結果となりましたが、大きな知見が得られましたのでこれを生かして来年も頑張ります!
- 水草を育てすぎた
今回の反省点はこれにつきます。
せっかくのコンクリ感が水草が隠れてしまいました。
水草育成上、大きな欠点を抱えている素材を使いながら水草の調子と茂みのボリュームを整えるのは難しかったです。
この水槽で色々と実験ができましたので、次回コンクリを使うときにはもっと上手くコントロールできるでしょう!
育てすぎてしまうのはいつもの悪い癖ですね。
今回使用した水草のリストです。
名前をタップ(クリック)すると水草図鑑へ飛びますので、気になる水草がありましたらご覧ください。
今回は硬度が高くなりそうでしたので、比較的高硬度に適正のある水草を多く使用しました!
- コブラグラス(途中で枯れました)
- ウォーターローン
- ヘアーグラス
- スタウロギネ・レペンス
水槽 | 120cm×60cm×60cm |
ろ過 | エーハイム2217 2台 底面フィルター直結 |
ライト | ADA ソーラーRGB 2台 12時間点灯 |
CO2 | 自作ミキサーにて1秒/4滴 |
底床 | ソイル;JUN マスターソイル ネクストHG 化粧砂:ADAコロラドサンド、庭用の砂利 |
素材 | コンクリートブロック、鉄管、トタン板 |
肥料 | オリジナル肥料を週1~2回程度 |
- 立ち上げから2週間:週/1回50%
- それ以降:2~3週/1回50%
今回のフィルターセッティング、底床ならマメな換水は必要無いのであまり換水をしませんでした。
お住まいの地域の水道水の水質によってはマメな換水が逆効果になることもありますので、換水を頻繁にしない管理も時には有効です。
換水頻度が少ない方が管理が楽ですから、楽できるところは楽をしてレイアウトに集中した方が良いというのが私の考えです。
- 時折古い葉を取り除く
- 時折毟るように水草を取り除く
このようなトリミング作業を2週間~1ヶ月毎に行っていました。
今回はマメなトリミングが必要な種類を使っていないので、トリミングの手間はかかりませんでした。
制作期間中は1度も掃除しませんでした。
私はマメにフィルターを洗う方ではありません。
マメに洗ってしまうといつまで経っても生物ろ過が成熟しないので本調子にならないからです。
生物ろ過については別記事で詳しく解説しましたので、興味のある方はぜひご覧ください。
- 12時間点灯
を製作期間中ずっと続けました。
水草の成長速度が早いこと、水草の発色が良いことから私はここのところずっと12時間点灯で管理しています。
- 水温:26℃
- PH:6.5~7.5
- GH:3~15
- TDS:80~250
コンクリの影響により、大きくGHとTDSが変化する水槽でした。
GH(硬度)が上昇し始めたら軟水器の中のイオン交換樹脂の再生処理をしてなんとか維持していた感じです。
次回コンクリを使う時はコーティングを厚めにして水質への影響をもっと抑えたいですね。
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