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どうも、プロアクアリストの轟元気(@ordinaryaqua)です。
本記事ではアクアリウム業界で使われる「水草の学名」をご紹介します。
本来の学名の使い方とは離れてしまうのですが、混乱を避けるために流通上使われている表記の方法などもご紹介します。
学名はラテン語表記のため日本語訳をする際に表記が微妙に変わってしまったり、日本人には馴染みの無い発音になってしまうものは英語表記の発音が使われることもあります。
学術的に正しい情報ではない部分もありますが「アクアリウム業界ではこんな感じで使われているんだなぁ」くらいのカジュアルな感覚で見ていただけると嬉しいです。
学名をまったく知らなくても水草を楽しむことはできるのですが学名を知ることでより水草沼にハマれますよ!
学名とは、世界共通で動植物の分類に用いられる名称のことです。
カール・フォン・リンネ氏によって体系化され、名前には規則があり基本的にラテン語を使い表記します。
世界共通で使えるようにするため1つの種に対して学名は1つだけです。
学名は研究結果によってコロコロ変わることもしばしば。最近はDNAを使用した分類方法が普及したことにより水草の学名も整理されてきました。
- 通称名 パールグラス
- 学名 Micranthemum micranthemoides
水草の学名表記は二名法により「属名+種小名」で表記されます。
日本人に例えるなら名字+名前みたいな感覚ですね。
学名は他の文と明確に区別するため「Micranthemum micranthemoides」のように斜字体で表記されることが多いです。
イタリックが使えない環境では「Micranthemum micranthemoides」のようにアンダーラインを引くこともあります。
水草を紹介するコンテンツで見慣れないアルファベットが斜めになっていたら学名だと思って良いでしょう。
属名
属名とは、似ている仲間をまとめた分類単位です。
同じ属の水草ならすべて共通です。
表記する際は最初の1文字を大文字、それ以外を小文字で表記します。
- パールグラス(Micranthemum micranthemoides)
- ラージパールグラス(Micranthemum umbrosum)
- キューバパールグラス(Micranthemum callitrichoides)
- ニューラージパールグラス(Micranthemum tweediei ‘Montecarlo’)
このように同じパールグラスの仲間なら属名は「Micranthemum」で共通です。
種小名
その種の特徴を表す言葉や地域名や人名などがが使われます。
水草の場合、種小名だけで種を特定させることはできないので、属名と組み合わせて種を判別します。
- クリプトコリネ スピラリス(Cryptocoryne spiralis)
- バリスネリア スピラリス(Vallisneria spiralis)
- ラガロシフォン マダガスカリエンシス(Lagarosiphon madagascariensis)
- レースプラント ‘広葉’(Aponogeton madagascariensis ‘henkelianus’)
種小名は同じ名称が使えるため属名違いで同じ種小名を持つものもあります。
- sp.⇒ speciesの略
- ssp.⇒ subspeciesの略
- var.⇒ varietasの略
- L.⇒ Linnaeusの略
などなど、.(ピリオド)は略称を表しています。
人名は最初は全文を表記していますが同じ文脈で同じ人名が出てきたら2回目からは略称を使います。
カール・フォン・リンネ氏の場合なら、Linnaeus⇒L. という具合ですね。
これから紹介するsp.、var.などは最初から略称を使って表記されます。
sp.、var.などは学名の途中に入りますが斜字体では無く、通常の字体で表記されます。
- 通称名 ロタラsp. ‘スィンドゥドゥルグ’
- 学名 Rotala sp. ‘Sindhudurg’
- 属名+sp.
このように表記します。
sp.は「species」の略語で、~の一種という意味です。
分類がはっきりしない水草が入荷した際などに使われることが多いのでショップで見かけた方も多いのではないでしょうか?
- 通称名 ハイグロフィラ トリフローラ
- 学名 Hygrophila triflora
こちらのハイグロフィラ トリフローラは流通当初は「ハイグロフィラ sp. インド」「ハイグロフィラ sp. インディア」などと呼ばれていました。
名前からも想像できる通りインド便にて入荷したのでこの名称が使われるようになったのでしょう。
今では学名が付き「ハイグロフィラ トリフローラ」と呼ばれるようになりました。
途中から販売名を変更すると混乱することから今でも「ハイグロフィラ sp. インド」で販売されることもあります。
- 属名+種小名+ssp.+亜種名
- 属名+種小名+subsp.+亜種名
亜種名はこのように表記されます。
ssp. 、subsp. はどちらも「subspecies」の略です。
亜種とは基本種とは異なった性質を持つもののことです。
例えば色が違う、模様が違うなどですね。
主に地理的な要因で亜種が生まれることが多いです。
この表現は水草業界ではあまり使われていません!
- 通称名 アヌビアス ナナ
- 学名 Anubias barteri var. nana
- 属名+種小名+var.+変種名
変種名はこのように表記されます。
var. とは「varietas」の略です。
変種とは基本種と異なった性質を持つ種のことです。
同じ種の他の変種とは区別されますが、変種同士で交雑が可能なため品種改良が盛んな種類が多いです。
水草だとアヌビアス バルテリーの仲間などが有名ですね。
- 属名+種小名+f.+品種名
このように表記されます。
f. とは「forma」の略です。
品種とは、斑入り種(葉に白い模様が入るタイプ)などのことです。
園芸などでは使用されることがあるようですが水草の場合は栽培品種として紹介されることが多くあまり使われません。
ラテン語読みだとフォールマなのですが馴染みが無いのでフォームと英語読みしてしまうことが多いです。水草業界ではほとんど使用されていません。
- 通称名 エキノドルス ‘オリエンタル’
- 学名 Echinodorus ‘Oriental’
- 属名+種小名+’栽培品種名’
- 属名+’栽培品種名’
このように表記されます。
栽培品種名は「一重引用符」で囲い最初の1文字を大文字で表記します。
栽培品種とはいわゆる改良品種のことで人為的に種をかけ合わせるなど、より魅力的な種となるよう工夫したもののことです。
「他と区別できる特徴があり、かつその特徴を維持したまま増殖が可能」というのが品種の定義なのですが、中には1代限りの特徴で終わるものも販売されたりもするのが仕入れの難しいところです。
水草ではエキノドルスの改良品種が有名です!
- 通称名 インバモ
- 学名 Potamogeton x inbaensis、Potamogeton dentatus x Potamogeton malaianus
- 属名+×(かけ算の記号)+種小名(雑種としての名前)
- 属名+種小名+×(かけ算の記号)+属名+種小名
このように表記されます。
雑種を表す場合は間に×(かけ算の記号)を入れます。
属名+×+種小名(雑種としての名前)←こちらの表記だと何と何の雑種なのかが分からないので「属名+種小名+×+属名+種小名」とされることもあります。
- 通称名 ピプトスパサ cf. リドレィ
- 学名 Piptospatha cf. ridleyi
- 属名+cf.+種小名
このように表記されます。
cf. は「confer」の略です。
参照名とは「他の資料とも見比べてみてね」ということです。
何らかの事情ではっきりと判別できない場合に使用されます。
属名+cf.+種小名 ←この表記の場合は「属名までははっきり分かったけど種小名ははっきりと判別できていないよ」ということです。
cf. より後ろにある部分がはっきりしないということですね。
現在流通している水草ではほとんど使用されていないのであまり見かけないでしょう。
学名表記としては正しくないのですが水草を流通させる上で使用される表記例です。
主に混乱を避けるために使用されます。
- 通称名 ヘランチウム テネルム ‘マディラ’
- 学名 Helanthium tenellum ‘Madeira’
- 通称名 ホマロメナsp. ‘スカダウサウス’
- 学名 Homalomena sp. ‘SEKADAU South’
- 属名+種小名+’産地名’
このように表記します。
産地名は英語か現地語(ブラジルならポルトガル語など)で表記されることが多いです。
最初の1文字が大文字になっている場合と全文が大文字になっている場合があります。
ぱっと見ただけだと栽培品種名と分からないのですが地名だったら産地名だなとざっくり判断しています。
主に現地採取便やその地域で採取された何の種類か分からない場合に使われることが多いです。
日本語表記の場合は「~産」のように表記することもあります。
ブケファランドラの仲間などはこのパターンが多いですね!
- クリプトコリネ アフィニス(インボイスネーム)
- 属名+種小名+インボイスネーム
- 属名+種小名+インボイス
- 属名+インボイスネーム
- 属名+インボイス
このように表記します。
インボイスネームとは輸出入の際に使用される名前です。
基本的に「~の~です」とはっきり分からない植物は輸出入できないので、正誤は別として学名表記されて輸出入されます。
インボイス、インボイスネームなどと記載されている場合は、「この名前で輸入されてきました。合っているか知らんけど」ということが暗に示されています。
見た目だけで判別するのが難しいものはインボイスネームのまま販売されることが多いです。
はっきりと判別できて正しい学名表記ができる場合は別ですが、基本的には輸出入時に使用された名前のまま表記して流通させた方が混乱が少ないと考えています。
- 通称名 クリプトコリネ ブローサ(アクアフルール便)
- 学名 Cryptocoryne bullosa
- 通称名 ミクロソルム プテロプス ‘トライデント’ トロピカ社
- 学名 Microsorum pteropus ‘Trident’
- 属名+種小名+’便名’
- 属名+種小名+’ファーム名’
- 属名+種小名+便名
- 属名+種小名+ファーム名
このように表記します。
名前の後ろに「タイ便」「インドネシア便」「タイワン便」などと表記されていれば便名です。
「トロピカ社」「アクアフルール社」など社名が表記されていればファーム名であることが多いです。
同じ名前で流通する水草でも便ごとに微妙に差があることが多く、こだわりの強い店舗などでは便名まで細かく表記されていることがあります。
学名というよりは販売名に表記されます。
- 命名者の表記
- キメラの表記
他にも学名表記には様々なものがありますが、水草が流通する過程ではあまり使われません。
いくつかある中から2つご紹介しますので参考までにご覧ください。
- 属名+種小名+命名者
このように表記します。
例えばリシアなら「Riccia fluitans L.」のように表記します。
L. は「カール・フォン・リンネ氏が命名しました」という意味です。
Riccia fluitans Linnaeusと表記すのこともありますが一般的には略称であるL.が使用されます。
学名部分は斜字体で名前の部分は通常の字体で表記されるこのが多いので、途中から字体が変わっていたら命名者なのかなと考えて良いです。
水草の場合は命名者は省略することが多いのであまり見かけないはずです。
- 属名+種小名 +(足し算の記号)属名+種小名
このように表記します。
接木した植物の表記をするのに使用します。
私の知る限り水草では接木して栽培しているものは無いですので、水草の学名表記で使われているのは見たことがありません。
- 通称名 リシア
- 学名 Riccia fluitans
- 分類 植物界 ゼニゴケ植物門 ゼニゴケ綱 ゼニゴケ亜綱 ゼニゴケ目 ウキゴケ科 ウキゴケ属 リシア
「界、門、綱、目、科」などの属よりも大きなくくりを上位分類と言います。
一般的には属名、種小名と一緒に表記されることは少ないです。
ラテン語で表記する際は最初の1文字を大文字、それ以外を小文字を使用します。
リシアの場合ならこんな感じです。
分類 | 日本語表記 | ラテン語表記 |
---|---|---|
界 | 植物界 | Plantae |
門 | ゼニゴケ植物門 | Marchantiophyta |
綱 | ゼニゴケ綱 | Marchantiopsida |
亜綱 | ゼニゴケ亜綱 | Marchantiidae |
目 | ゼニゴケ目 | Marchantiales |
科 | ウキゴケ科 | Ricciaceae |
属 | ウキゴケ属 | Riccia |
種 | リシア フルイタンス | R. fluitans |
属名、種小名は斜字体で表記するのに対し、上位分類は通常の字体を使います。
細かな分類が必要な場合は大、上、亜、下、小などが使われることもあります(例:上科、亜科など)。
さらに細かく科の下の分類として「連」が使われることもあります。
当ブログの「直感で選ぶ水草図鑑」では水草を科で分類したページも用意しています。
大きなくくりで水草の分類を知りたいときに便利ですので、ぜひご利用ください。
- 通称名 ミクロソルム プテロプス
- 学名 Microsorum pteropus
ミクロソルムは「ミクロソルム」の名前でも流通しています。
ミクロソルムが使われることが多いのですが、よりラテン語を正しく日本語読みしたミクロソルムが使われることが増えてきました。
そのため混乱を避けるためにミクロソルム、ミクロソルムなど併記していることもあります。
ミクロソルム プテロプス、ミクロソルム プテロプスも同種を指す名前ですのでお買い物するはあまり気にしないでくださいね。
その他にも
- ルドウィジア ⇒ルドウィギア
- ストロジン ⇒スタウロギネ
- ニムファ ⇒ニムファエア
なども表記が徐々に変わってきています。
1度浸透した名前を変えていくことは大変なことなので、変化は緩やかだとは思いますが少しづつ変わっていくでしょう。
ラテン語を日本語で発音する場合、馴染みの無いものになってしまったり、発音しづらいものになる場合は英語読みでの発音も併用されるのが現実的ではないかと私は考えています。
とはいえ、大きく違うものはよりラテン語読みに近いものに変わっていくと思いますので徐々に慣れると良いでしょう。
- スピラリス⇒ 螺旋形の
- オーストラリス⇒ 南方の
- カージナリス⇒ 紅色の
- ナナ⇒ 背の低い
などなど、ラテン語の意味を知ると水草の学名を見るのがちょっと楽しくなります。
まったく知らなくても水草を楽しめますが、学名の意味を知るとさらに水草に触れることが楽しくなるはずです!
こちらの辞典は僕も使っているのですが、水草の学名に使われる単語が多数載っているので面白いですよ!
当ブログの直感で選ぶ水草では学名索引を用意してありますので、学名からも水草を検索することができます。
学名から水草を調べたくなったらぜひご利用ください。
今回は「水草の学名」を解説しました。
水草の学名は研究結果により変わることもしばしばあります。
ルール自体も変わることがあるので表記自体が変わることもあります。
水草のお買い物自体は学名がまったく分からなくても楽しめますから、ゆっくり学名に慣れていくと水草をもっと楽しめるでしょう!
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