どうも、プロアクアリストの轟元気(@ordinaryaqua)です。
本記事は「水草用ソイル」を徹底解説します。
ソイルの登場により「どなたでも簡単に水草に適した環境を作れる」ようになりました。
私はソイルのことを「水草の育成を楽にする素晴らしいアイテム」だと考えています。
ところで、普段使っているけど「仕組みが説明できないもの」って意外とありますよね。
スマホとか車とか。ソイルもそうですよね。
そこで今回はソイルのことを詳しく掘り下げて解説していきますよ。
「仕組みを理解」すると応用が利くようになります。
水草レイアウトを上達させたい方はぜひご覧ください。
ソイルとは「土を粒状に焼き固めたもの」です。
水中でも簡単に潰れず、長期間形を維持するようになっています。
黒ボク土を原料にしているものは黒く、赤土を原料にしているものは茶色をしています。
腐植が豊富で水草が良く育つタイプ。
腐食が少なく濁りづらいタイプ
ソイルには大きく分けるとこちらの2種類があります。
腐食とは、腐葉土みたいなものと思って頂ければ大丈夫です。
落ち葉等の有機物を微生物が分解したものですね。
水草やバクテリアの養分になります。
「吸着系ソイル」
このように分類すると語弊がありますが、この名称で流通しているので一応この分類としました。
「すべてのソイルには吸着作用があり、アクの脱色や濁りを抑える作用があります」
そのため全てのソイルは吸着系なのですが、流通しているソイルの中で「養分となる腐植が少なく、結果的に濁りが出ず、本来ソイルの持つ吸着作用が強調されるソイル」のことを吸着系ソイルとしています。

ややこしい。
- pH緩衝作用
- 重金属を吸着
- 無機栄養の供給
主な腐植の作用はこちらの3つです。
ソイルに豊富に含まれる「腐植」の力により水草育成に適した環境が成り立っています。
水素イオン(H+)の交換能力によって土壌中の急激なpHの変化を緩和します。
カドミウムや銅等、大量にあると有害な金属と腐植が結合して水草に吸収されづらい形にします。
バクテリア等の働きにより腐植はゆっくりと分解され無機栄養(肥料)になります。
そして水草の養分となるわけです。
- 「腐植の多いソイル」=栄養系ソイル
- 「腐植の少ないソイル」=吸着系ソイル
腐植の多いソイルは、バクテリアの発生量が多く、そのためセットから一定期間白濁が続く等の不安定な時期が続きます。
腐植の少ないソイルはバクテリアの発生量が少なく、その分、白濁が少なくソイルの持つ吸着作用が強調されます。
そのため、すぐに水がピカピカになるので「吸着系ソイル」と呼ばれるようになったという経緯があります。
腐食の多いソイルはそれだけバクテリアの発生量が多いので(良い意味でも悪い意味でも)、ろ過バクテリアの発生量が多いと言えます。
バクテリアが大量に発生してしまうことは、白濁などの原因にもなるのですが、水槽の立ち上がりが早いというメリットもあります。
ろ過バクテリアを使った「生物ろ過」についてはこちらの記事で詳しく解説しましたので、興味のある方はぜひご覧ください。


ソイルと砂利の場合の立ち上がり違いなども詳しく解説しました!
- 水草が好む水質にしてくれる
- 養分を蓄える力がある
- 根を張りやすい形状
ソイルを使うと水草が育ちやすい理由はこちらの3つです。
pH 5.5~6.5
これが水草の好む水質です。
弱酸性にすることで「CO2の吸収効率が上がる」「肥料の吸収効率が上がる」という大きなメリットがありますよ。
ソイルは水槽に入れて「水を入れるだけ」で弱酸性の水質を作ってくれます。
どのようなメカニズムで適した水質にするかは、後ほど詳しく解説します。
また、こちらの記事で「水草水槽の水質」について詳しくまとめました。
興味のある方はぜひご覧ください。

水道水の水質によっては、ソイルを使っても弱酸性にならない場合があります。
その場合は、pH降下剤や硬度を下げるろ材などを使う必要がありますよ。
こちらの記事で「pH、硬度を下げる方法」をまとめましたので、お困りの方はぜひご覧ください。

砂利と違いソイルには養分を蓄えておく力があります。
水草育成用のソイルを使うと、しばらく肥料を添加しなくても調子の良い状態をキープ出来るのはこの作用のおかげです。
「肥料を使いこなすこと」
は水草水槽で一番難しいところだと私は考えています。
ここをある程度フォローしてくれるソイルはそれだけで優秀と言えますよ。
どのようなメカニズムで養分を蓄えるかは、後ほど詳しく解説します。
- 程よく柔らかい
- 適度に空隙ができるので底床がフカフカ
こちらの2つが根を張りやすい要因です。
砂利系よりも深く長く根が伸びることを確認していますよ。
- 色が「黒」か「茶色」しか無い
- 養分を含んでいるので「藻類」が出るかもしれない
- 寿命がある
原料の関係から色はこの二色しかありません。
あまり見栄えは良くありませんので、水草をたくさん植えて見えないようにしたいですね。
商品ごとに差がありますが、基本的に水草育成用のソイルには養分が入っています。
これを上手く消費できないと「藻類」の発生原因になりますよ。
ソイルを使う場合は、「水草をたくさん植えて」養分を消費させることで藻類を予防しましょう。
これが一番のデメリットだと思います。
土を焼き固めたものなので使っていると徐々に崩れて泥状になってしまいます。
一応の目安としては「1年」程度で丸っと交換した方が良いですよ。
後ほど寿命については詳しく解説します。

ここからのお話は上級者向けです。
知らなくても、キレイな水草水槽は作れますが「さらにキレイな水草水槽を作りたい方」「もっと詳しくなりたい方」はぜひご覧ください!
- イオン交換
- 含まれている腐植酸等の影響
ソイルはこれらの影響で弱酸性の軟水を作ります。
ソイルは「マイナスの電荷」を持っています。
細かく言うと含まれている「腐植」と「粘土分」がマイナスの電荷を持っています。
これよって水中のカルシウムイオン(Ca2+)やマグネシウムイオン(Mg2+)などの「プラスの電荷」を持っているものを吸着するため軟水になります。
ソイルはイオン交換によって養分を蓄えています。
ソイルから伸びるマイナスの手がプラス電荷の元素を捕まえているイメージで図にしてみました。
- カルシウムイオン(Ca2)
- マグネシウムイオン(Mg2)
- カリウムイオン(K)
- アンモニアイオン(NH4)
これらは水草の養分になります。
- 硝酸態窒素(NH3)
も水草の養分となりますが、マイナスの電荷を持っているのでソイルは保持できないんですね。
このように他の陽イオンと簡単に入れ替わる陽イオンのことを
「交換性塩基(置換性塩基)」
と呼びます。
また、陽イオンを蓄えられる能力のことを
「CEC(陽イオン交換容量)」
と呼びます。
一般に腐植や粘土が多い底床ほどCECが高く、砂利系の底床では少ないです(というかほとんど0)。
根から酸を出す
酸の水素イオンがソイルに付く
優先順位の低い元素が外れる
外れた元素を吸収
このように、水草の根は交換性塩基の作用を上手に利用してソイルから養分を引き出して吸収しています。

こちらの図はセット後それなりの時間が経ったソイルをイメージしたものです。
ソイルの寿命にもイオン交換能力が大きく関わっています。
水草がソイルから肥料を吸収して、かわりに水素(H)が増えている状態ですね。
このような状態になると下記の症状がでます。
- 肥料不足症状が出る
- 肥料の効きが悪い
- ソイルが崩れてヘドロ状になる
これは単純にソイル中の養分不足が原因です。
ソイル中に含まれている元素は根の作用によって徐々に水素(H)に置き換わっていきます。
イオン交換における水素の順位が高いため、一度、水素と置き換わるとなかなか他の元素がソイルとくっつかなくなります。
肥料切れになってからでは、ソイル内の養分を回復させることは難しいので、そうなる前にマメに追肥していくのが望ましいですね。
腐食をバクテリアが無機栄養に分解
水草が養分として吸収
腐食が徐々に減少
CECも同時に減少
養分保持能力も減少
これは「土壌バクテリアの活性」と深く関わってきます。
腐植はゆっくりとバクテリアに分解され、水草が吸収できる「無機栄養」になります。
腐植はバクテリアのご飯でもあるのですが、追加しない限りは徐々に減っていきます。
腐食が減るとその分CECが少なくなるので養分を保持する力が減ります(粘土分のCECは半永久的に作用しますが)。
そのため養分の流出が起きやすくなり肥料の効きが悪くなりますよ。
また、ソイルに水素イオンがたくさんくっ付いている(=pHの低いソイル)ではバクテリアの活性が鈍くなるので、この点も影響していると思われます。
こちらも「土壌バクテリア」と深く関わっています。
ソイルは粒状のため水草が根を張りやすくなっています。
土を丸めて人工的に作られたものですが、この形を水槽内で維持していくのにバクテリア達の力が必要なんですね(カルシウム分によって形を保ってい部分もありますが)。
バクテリア達はソイル中の腐植を食べてウンチをします。
このウンチ(ねばねば)がソイルの結合を助けているんです。
このようにバクテリアの働きによって土がまとまることを
「団粒化」
といいます。
バクテリアのご飯が少ない
バクテリア減少
団粒化作用が弱くなる
底床内の酸素が少なくなる
嫌気性バクテリア(ヘドロの元)が増える
団粒化を促す善玉バクテリアが減少
腐植が少なくなるとこのような流れから、ソイルが崩れてヘドロのようになってしまいます。
徐々に団粒化作用が弱まることで、底床内の空隙が少なくなり酸素が行き渡らなくなります。
こうなると、さらに善玉バクテリアが減少するので、加速度的にソイルがヘドロのようになるというわけです。
負のスパイラルが始まると「底床内の環境を健全な状態に戻すのは難しい」のでリセットしたほうが話が早いですね。
こうなる前にソイルを交換した方が簡単ですし結果として良いので
「ソイルは1年くらいで交換しましょう」
と喧伝せれているわけです。
水草は根に酸素を送り込んで、根腐れしないようにしています。
そのため、水草が元気よく根を張った水槽は、底床内が嫌気(酸素があまり無い状態)になりづらいため、ソイルが長持ちしますよ。
コンディションの良い水草水槽の方がソイルが長持ちするのはこのためです。
- ソイルの肥料切れを待たずマメに追肥をする
- 定期的にソイルを追加、交換する
ソイルの寿命を延ばす方法をまとめるとこちらの2つです。
水草の根張りや、植え替え、底床クリーナーでの掃除等で物理的にソイルが潰れてしまうことがあるので必ずいつかは寿命がきます。
しかし「底床内のバクテリアを上手に管理すること」でソイルの寿命を延ばすことが出来ますよ。
そのためにはバクテリアのご飯となる有機物を底床内に定期的に追加することが有効です。
そのため
「ソイルを定期的に追加する」
「定期的にソイルを一部交換する」
という方法が現在のところ、もっとも簡単なソイルを長持ちさせる方法だと考えています。
ソイル自体が「有機肥料」とも考えられるので、定期的に新しいソイルを追加していくことは有効なはずですよ。
水草水槽における「砂利系底床の特徴」についてはこちらの記事でまとめてあります。
興味のある方はこちらの記事も御覧ください。

ソイルと砂利など、適した底床は水槽によって変わります。
こちらの記事で「水槽環境別」におすすめの底床タイプを解説しました。
興味のある方はぜひご覧ください。

ソイルに限らず、「水草水槽におすすめの底床」をこちらの記事でまとめてあります。
底床選びの参考に、どうぞご覧ください!

今回は「水草用ソイル」について解説しました。
ソイルと上手に付き合うには
「土壌バクテリアを大切にすること」
が重要と私は考えています。
もっと言うと、水草水槽は
「土壌バクテリアと上手に付き合うこと」
と言えるかもしれませんね。

土壌バクテリアに関しては不確定要素が多すぎて、なかなか研究が進んでいません。何か掴んだらまとめて記事にしますので気長にお待ちください!