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どうも、プロアクアリストの轟元気(@ordinaryaqua)です。
本記事は「水草用ソイル」を徹底解説します。
水草用ソイルの登場により「どなたでも簡単に水草に適した環境を作れる」ようになりました。
私はソイルのことを「水草の育成を楽にする素晴らしいアイテム」だと考えています。
ところで、普段使っているけど「仕組みが説明できないもの」って意外とありますよね。
スマホとか車とか。ソイルもそうですよね。
そこで今回はソイルのことを詳しく掘り下げて解説していきますよ。
「仕組みを理解」すると応用が利くようになります。
水草レイアウトを上達させたい方はぜひご覧ください。
水草水槽におすすめのソイルはこちらの記事でまとめてご紹介してます。
理屈はいいから使いやすいソイルが知りたい!
という方はこちらの記事をご覧ください。
ソイルとは「土を粒状に焼き固めたもの」です。
水中でも簡単に潰れず、長期間形を維持するようになっています。
黒ボク土を原料にしているものは黒く、赤土を原料にしているものは茶色です。
水草育成のために養分を追加したものや濁りを予防するために活性炭を混ぜ込んだものなど様々なものがあります。
その特徴から「栄養系ソイル」「吸着系ソイル」の2つに大別されます。
この分け方は「この養分量なら栄養系!」などと判断基準があるわけではありませんので、紹介する場所や人によって微妙に異なる個ことがあります。
もともと養分をたくさん含んでいる、なんらかの養分をプラスしたタイプ
もともと養分が少ない、活性炭が混ぜてあるなど水が濁りづらいタイプ
ADA アクアソイル アマゾニア
JUN プラチナソイル
もともとの原料の土に含まれている養分や人工的に養分を追加したソイルのことです。
特にもともとの土に含まれている養分が重要で、腐葉土のような成分を多く含むソイルほど水草の育ちが良い傾向があります。
人工的に肥料のような成分を追加しているソイルもありますが、それは肥料を添加することでも補えます。
大事なのはいかに多くの腐植を含むかですので、栄養系ソイルを探す際はそこに注目しましょう。
僕は腐植を多く含むソイルのことを栄養系ソイルとしています。
- 腐葉土のような有機的な養分
- 肥料のような無機的な養分
ソイルには主にこちらの2つの養分が含まれています。
どちらも水草の養分になるということには変わりはないのですが、それぞれ特徴があります。
- 水草に適した水質にする効果(弱酸性化、軟水化)
- 肥料分を保つ効果(保肥力)
- 水草の根の活性化
- バクテリアの餌になる
- バクテリアが分解することで水草の肥料になる
などなど、水草用ソイルのメリットの多くは有機的な養分にあります。
簡単に言うとソイルに含まれている「腐葉土」ような成分がこれに当たります。
腐葉土のような成分は「腐植」と呼ばれます。
腐植については後ほど詳しく解説します。
- 窒素
- カリウム
- リン
などなど、いわゆる水草用の肥料に含まれている成分です。
ソイルの種類によっては製造過程で肥料分を混ぜているものもあります。
有機的な養分よりも即効性があり、すぐに水草が吸収できる利点があります。
水草が必要とする栄養素については別記事で詳しく解説していますので、興味ある方はぜひご覧ください。
- PH緩衝作用
- 重金属を吸着
- 無機栄養の供給
主な腐植の作用はこちらの3つ。
腐植は水素イオン(H+)の交換能力によって土壌中の急激なPHの変化を緩和します。
カドミウムや銅などの大量にあると有害な金属と腐植が結合して水草に吸収されづらい形にする効果もあります。
そして、バクテリア等の働きにより腐植はゆっくりと分解され無機栄養(肥料)になります。
そして水草の養分となるわけです。
このようにソイルに豊富に含まれる「腐植」の力により水草育成に適した環境が成り立っています。
- 「腐植の多いソイル」=栄養系ソイル
- 「腐植の少ないソイル」=吸着系ソイル
腐植の多いソイルは、バクテリアの発生量が多くセットから一定期間白濁が続く等の不安定な時期が続きます。
腐植の少ないソイルはバクテリアの発生量が少なく、その分、白濁が少なくソイルの持つ吸着作用が強調されます。
そのため、すぐに水がピカピカになるので「吸着系ソイル」と呼ばれるようになったという経緯があります。
腐食の多いソイルはそれだけバクテリアの発生量が多いので(良い意味でも悪い意味でも)、ろ過バクテリアの発生量が多いと言えます。
バクテリアが大量に発生してしまうことは、白濁などの原因にもなるのですが、水槽の立ち上がりが早いというメリットもあります。
ろ過バクテリアを使った「生物ろ過」についてはこちらの記事で詳しく解説しましたので、興味のある方はぜひご覧ください。
- 水草が好む水質にしてくれる
- 養分を蓄える力がある(養分を含んでいる)
- 根を張りやすい
- 色が「黒」か「茶色」しか無い
- 養分を含んでいるので「藻類」が出るかもしれない
- メリットはずっと続かない
水草が好む水質にしてくれる
弱酸性の軟水
これが水草の好む水質です。
弱酸性にすることで「CO2の吸収効率が上がる」「肥料の吸収効率が上がる」という大きなメリットがあります。
ソイルは水槽に入れて「水を入れるだけ」で弱酸性の水質を作ることができますのでお手軽です。
どのようなメカニズムで適した水質にするかは、後ほど詳しく解説します。
また「水草水槽に最適な水質」については別記事で詳しくまとめました。
本記事と合わせてご覧になることでより理解が深まるはずです!
養分を蓄える力がある
ソイルには養分を蓄えておく力があります。
水草育成用のソイルを使うと、しばらく肥料を添加しなくても調子の良い状態をキープできるのはこの作用のおかげでもあります。
「肥料を使いこなすこと」
は水草水槽で一番難しいところだと私は考えています。
ここをある程度フォローしてくれるソイルはそれだけで優秀と言えますよ。
どのようなメカニズムで養分を蓄えるかは、後ほど詳しく解説します。
水草用肥料の使い方、おすすめの肥料についてはこちらの記事で解説していますので、肥料を使う際はぜひご覧ください。
根を張りやすい
- 程よく柔らかい
- 適度に空隙ができるので底床がフカフカ
こちらの2つが根を張りやすい要因です。
砂利系よりも深く長く根が伸びることを確認しています。
色が「黒」か「茶色」しか無い
原料の関係から色はこの二色しかありません。
あまり見栄えは良くありませんので、水草をたくさん植えて見えないようにしたいですね。
化粧砂を使うことで見た目に変化をつけることもできますので、お好みで取り入れると良いでしょう。
養分を含んでいるので「藻類」が出るかもしれない
商品ごとに差がありますが、基本的に水草育成用のソイルには養分が入っています。
これを上手く消費できないと「藻類」の発生原因になりますよ。
ソイルを使う場合は、「水草をたくさん植える」「水草を繁茂させる」ことで養分を消費させ藻類を予防しましょう。
藻類対策は水草水槽を綺麗に維持するために欠かせないものです。
こちらの記事で詳しく解説していますのでお困りの方はぜひご覧ください。
メリットはずっと続かない
- 水草に適した水質にする
- 水草の養分が含まれている
ソイルの大きなメリットであるこれらの効果は残念ながらずっと続くわけではありません。
状況や含まれる腐植、養分量にもよりますが、3ヶ月~1年程度で効果がなくなります。
効果が無くなるだけですのでソイルをずっと使い続けることはできるのですが、新品のソイルのような「何もしなくてもある程度水草が育つ」ような効果は切れてしまいます。
ソイルの効果が切れたら水質調整や肥料添加に力を入れないと長期に渡り水草に良い環境を維持することが難しくなりますよ。
水草水槽の長期維持についてはこちらの記事で詳しく解説していますので、興味のある方はぜひご覧ください。
ここからのお話は上級者向けです。
知らなくても、綺麗な水草水槽は作れますが「さらに綺麗な水草水槽を作りたい方」「もっと詳しくなりたい方」はぜひご覧ください!
- イオン交換
- 含まれている腐植酸等の影響
ソイルはこれらの影響で水草に適した弱酸性の軟水を作ります。
ソイルは「マイナスの電荷」を持っています。
細かく言うと含まれている「腐植」と「粘土分」がマイナスの電荷を持っています。
これよって水中のカルシウムイオン(Ca2+)やマグネシウムイオン(Mg2+)などの「プラスの電荷」を持っているものを吸着するため軟水になります。
ソイルを使わずに水質を調整する方法はこちらの記事でまとめてご紹介しています。
水質調整は水草水槽管理のポイントですのでぜひご覧ください。
ソイルはイオン交換によって養分を蓄えています。
ソイルから伸びるマイナスの手がプラス電荷の元素を捕まえているイメージで図にしてみました。
- カルシウムイオン(Ca2)
- マグネシウムイオン(Mg2)
- カリウムイオン(K)
- アンモニアイオン(NH4)
これらは水草の養分になります。
- 硝酸態窒素(NH3)
も水草の養分となりますが、マイナスの電荷を持っているのでソイルは保持できないんですね。
陽イオンと簡単に入れ替わる陽イオンのことを
「交換性塩基(置換性塩基)」
と呼びます。
また、陽イオンを蓄えられる能力のことを
「CEC(陽イオン交換容量)」
と呼びます。
一般に腐植や粘土が多い底床ほどCECが高く、砂利系の底床では少ないです(というかほとんど0)。
根から酸を出す
酸の水素イオンがソイルに付く
優先順位の低い元素が外れる
外れた元素を吸収
このように水草の根は交換性塩基の作用を上手に利用してソイルから養分を引き出して吸収しています。
こちらの水槽はずっとソイルを交換せずに使い続けている水槽です。
2022年11月2日で水を張ってから832日が経過しました。
このようにソイルであっても長期に渡り使うことができます。
一概にこれくらいの期間使えますと言えないのですが頑張れば10年以上使い続けることもできます。
ただしソイルの持つ水草に好ましい効果は長くても1年程度で無くなります。
養分が切れる、水質調整効果が無くなると下記のような症状がでます。
- 肥料不足症状が出る
- 肥料の効きが悪い
- ソイルが崩れてヘドロ状になりやすくなる
これは単純にソイル中の養分不足が原因です。
ソイル中に含まれている元素は根の作用によって徐々に水素(H)に置き換わっていきます。
イオン交換における水素の順位が高いため、一度、水素と置き換わるとなかなか他の元素がソイルとくっつかなくなります。
肥料切れになってからでは、ソイル内の養分を回復させることは難しいので、そうなる前にマメに追肥していくのが望ましいですね。
腐食をバクテリアが無機栄養に分解
水草が養分として吸収
腐食が徐々に減少
CECも同時に減少
養分保持能力も減少
これは「土壌バクテリアの活性」と深く関わってきます。
腐植はゆっくりとバクテリアに分解され、水草が吸収できる「無機栄養」になります。
腐植はバクテリアのご飯でもあるのですが、追加しない限りは徐々に減っていきます。
腐食が減るとその分CECが少なくなるので養分を保持する力が減ります(粘土分のCECは半永久的に作用しますが)。
そのため養分の流出が起きやすくなり肥料の効きが悪くなりますよ。
また、ソイルに水素イオンがたくさんくっ付いている(=PHの低いソイル)ではバクテリアの活性が鈍くなるので、この点も影響していると思われます。
こちらも「土壌バクテリア」と深く関わっています。
ソイルは粒状のため水草が根を張りやすくなっています。
土を丸めて人工的に作られたものですが、この形を水槽内で維持していくのにバクテリア達の力が必要なんですね(カルシウム分によって形を保ってい部分もありますが)。
バクテリア達はソイル中の腐植を食べてウンチをします。
このウンチ(ねばねば)がソイルの結合を助けているんです。
このようにバクテリアの働きによって土がまとまることを
「団粒化」
といいます。
バクテリアのご飯が少ない
バクテリア減少
団粒化作用が弱くなる
底床内の酸素が少なくなる
嫌気性バクテリア(ヘドロの元)が増える
団粒化を促す善玉バクテリアが減少
腐植が少なくなるとこのような流れから、ソイルが崩れてヘドロのようになりやすくなります。
徐々に団粒化作用が弱まることで、底床内の空隙が少なくなり酸素が行き渡らなくなります。
こうなると、さらに善玉バクテリアが減少するので、加速度的にソイルのヘドロ化が進むというわけです。
負のスパイラルが始まると「底床内の環境を健全な状態に戻すのは難しい」のでリセットしたほうが話が早いですね。
こうなる前にソイルを交換した方が簡単ですし結果として良いので
「ソイルは1年くらいで交換しましょう」
と喧伝せれているわけです。
- ソイルの肥料切れを待たずマメに追肥をする
- 定期的にソイルを追加、交換する
ソイルの寿命を延ばす方法をまとめるとこちらの2つです。
水草の根張りや、植え替え、底床クリーナーでの掃除等で物理的にソイルが潰れてしまうことがあるので必ずいつかは寿命がきます。
しかし「底床内のバクテリアを上手に管理すること」でソイルの寿命を延ばすことができますよ。
そのためにはバクテリアのご飯となる有機物を底床内に定期的に追加することが有効です。
そのため
「ソイルを定期的に追加する」
「定期的にソイルを一部交換する」
という方法が現在のところ、もっとも簡単なソイルを長持ちさせる方法だと考えています。
ソイル自体が「有機肥料」とも考えられるので、定期的に新しいソイルを追加していくことは有効です。
こちらの水槽は1年ぐらいの周期で少しソイルを追加しています!
ソイルがフューチャーされることが多いですが砂利、砂を使っても十分に水草を育てることができます。
水草水槽における「砂利系底床の特徴」についてはこちらの記事でまとめてあります。
興味のある方はこちらの記事もご覧ください。
ソイルと砂利など、適した底床は作りたい水槽によって変わります。
こちらの記事で水槽環境別におすすめの底床タイプを解説しました。
ソイルに限らず、「水草水槽におすすめの底床」をこちらの記事でまとめてあります。
底床選びの参考に、どうぞご覧ください!
今回は「水草用ソイル」について解説しました。
ソイルと上手に付き合うには
「土壌バクテリアを大切にすること」
が重要と私は考えています。
もっと言うと、水草水槽は
「土壌バクテリアと上手に付き合うこと」
と言えるかもしれませんね。
土壌バクテリアに関しては不確定要素が多すぎて、なかなか研究が進んでいません。何か掴んだらまとめて記事にしますので気長にお待ちください!
この記事が参考になったら感想を教えてもらえると嬉しいです。
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