本記事では「硝化菌」について解説します。
硝化菌は有機物分解菌、原生動物と同様、生物ろ過の一翼を担う重要なろ過バクテリアです。
ですが、水槽セット初期は硝化菌の数が少ないため、環境が不安定になりがちですよ。
素早く硝化菌を増やすことはキレイなアクアリウムを作る上でとても重要です!
「硝化菌の特徴」「増殖過程」「硝化作用のチェック方法」など詳しく解説していきますので、硝化菌と上手に付き合えるようになりましょう。
初心者の方にも分かりやすく丁寧に解説していきますので、ぜひお読みください。
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- アンモニアを分解して亜硝酸にする菌 → 「アンモニア酸化バクテリア(ニトロソモナス等)」
- 亜硝酸を硝酸に分解する菌 → 「亜硝酸酸化バクテリア(ニトロバクター等)」
この二つのバクテリアを「硝化菌」と呼びます。
また、毒性の強いアンモニアを毒性の弱い硝酸まで分解することを「硝化作用」と呼びますよ。
硝化作用とは毒性の強いアンモニアを毒性の弱い硝酸まで分解する作用のことです。
「毒性の強いアンモニア」➡「毒性のやや強い亜硝酸」➡「ほぼ毒性の無い硝酸」
アンモニアは毒性が非常に強いため、分解する作用が無い状態で許容量を超えると生物が死んでしまいます。
そこでろ過バクテリアを繁殖させて「生き物に良い環境をキープする」というのが、フィルター&ろ材のお仕事です。


アンモニアはpH7以上になると加速度的に毒性が強くなります。
そのためpHの高い環境では特に注意が必要です(海水など)。
逆に弱酸性の環境ではほとんど毒性を持たないのであまり問題になりませんよ。
むしろ、アンモニアを分解して出来る「亜硝酸」が問題になります。


主に「残り餌」「生き物の排泄物」をバクテリアが分解して発生します(主に有機物分解菌 )。
また、生き物の死骸、枯れ葉などもアンモニア発生原因になります
アンモニアを「アンモニア酸化バクテリア」が食べて亜硝酸にします。
亜硝酸を「 亜硝酸酸化バクテリア 」が食べて硝酸にします。
溜まった硝酸を換水で取り除きます。
これが硝化作用の簡単な流れです。
この硝酸まで分解される過程が「生物ろ過」と言われることが多いですよ。
脱窒バクテリアが活躍出来る環境では、さらに「硝酸を窒素まで還元」することが出来ます。
ですが、水槽内ではなかなかその環境を作ることが難しいので換水で硝酸を取り除くのが一般的です。
「水草の肥料になる=藻類の栄養にもなる」ということですので、多量にあると藻類の発生原因にもなるので注意しましょう!
嫌気条件下(酸素が無い環境)では酸素の代わりに硝酸を使って呼吸します。
結果、硝酸は窒素まで還元され、窒素ガスとして水槽外へ放出されます。
これがしっかり機能していれば換水で硝酸を取り除く必要がなくなりますが、嫌気条件を作るの大変なので基本的には無いものとして考えています。
ただし、水草水槽の場合は硝酸を水草が吸収するので「本当に安定した環境下」ではあまり換水しなくても大丈夫ですよ。
硝化菌を含めた「生物ろ過全体のあらまし」はこちらの記事で詳しく解説しました。
こちらも合わせてご覧になることで、生物ろ過について詳しくなります。
お時間のある際にぜひどうぞ!

- 浮遊性
- 分裂で殖える
- 水分が必要
- 無機の炭素がご飯
- 水温、pHによって活動が左右される
- アンモニアの酸化に大量の酸素が必要
漂う様に生活していて基本的にろ材に定着する力を持ちません。
ろ材に定着させるにはヌルヌル(バイオフィルム)が必要です。
「単独ではろ材に定着出来ない」これが硝化菌最大のポイントと言えるでしょう!
バクテリアらしく分裂で殖えます。
分裂と聞くと病気の菌みたいに爆発的に殖えそうですが残念なことにこいつらは一日に1回くらいしか分裂しません。
あんまり増えないので水槽が立ち上がるまでに時間がかかわけです。
酸素が多くある環境下では死んでしまうので基本的に空気中では生きていけません。
- 魚と一緒に来る(エラにちょっといます)
- 水草と一緒に来る(根に付いてくることがあります)
- 硝化菌剤を使う
水槽に来る方法はだいたいこちらの3通りです。
お魚と水草にくっ付いてくる量は微々たるもので分裂速度も遅いのです。そのため「バクテリア剤を入れましょう」と店員が言うわけです。
二酸化炭素や炭酸塩から炭素を取り入れることが出来ます。
なのであまり気にしなくて大丈夫です。
活性や増殖力は温度、pHに左右されます。
30℃くらいで活性が最大になります。
5℃くらい~45℃くらいが活動範囲です。
活性を最大化させるには、高水温、アルカリ性にすればよいわけです。
セット初期に一時的に水温を高くする手法がありますが、理にかなっていますね!
通常の水温(25℃程度)でもそこまで活性は下がらないのでそれほど気にしなくても良いでしょう。
pHを弱酸性にキープしたい水草水槽は硝化菌にとって過酷ということになります。
pH6.5程度でしたら90%くらいの活性なのでそれほど気にしなくても良いのですが、これが6.0くらいになると30%を切ります。
硝化菌の活性が下がる酸性の環境で管理している方は、ろ材量を増やして(硝化菌の住処を増やす)菌自体の絶対量を増やすことで対応しましょう。
僕はお魚販売水槽をpH5.0~7.5くらいで管理していました(多くの水槽が5.0~6.0)。
低pHの水槽でも特に問題がでることはありませんでしたよ。
むしろ低pHで管理したほうが調子がよかったりします。
低pHだと悪玉菌(病気の原因菌や白濁を起こす菌等)の活性も下がるからだと考えられます。
硝化菌のことだけ考えていればお魚が飼育できるわけでは無いということでしょうか。
色々試行錯誤した結果、低pHで管理した方が調子が良かったので、ほとんどの魚種を低pHで管理するようにしていました(グッピーもプラティもモーリーもです)。
ややっこしいですが硝化作用の化学式を書きました。
要するに「アンモニア1つを硝酸にするためには、酸素が2つ必要」ということです。
また、水素が発生するためpHが下がります。
水の中に十分に酸素が無いと十分に硝化しないので注意しましょう。
セット初期など硝化菌を増やしたい時は、エアレーションをすると良いですよ。
実際の水槽を例にして硝化菌の増殖過程を紹介します。
まずはこちらの図をご覧ください。
これは「水槽セット初期のアンモニア、亜硝酸、硝酸量の変化」をグラフにしたものです。
※分かりやすくするため、硝酸は10分の1の量でグラフにしました
※一例です。各数値の増減は水槽によって微妙に異なります
- アンモニアの発生と蓄積
水槽セット直後よりアンモニアが発生します。徐々に蓄積されると同時に「アンモニア酸化バクテリア」が発生します。アンモニアはpHが高い環境で加速度的に毒性が増します。pH7以上の環境の場合、注意が必要ですよ。海水水槽の場合、仕様上pH8以上であることがほとんどなので特に注意しましょう。逆に弱酸性では毒性を発揮しません。油断していると後述する亜硝酸が増えるあたりで環境が急に悪くなるので気を抜かないように!
- 亜硝酸の発生と蓄積
アンモニアがある程度蓄積されると「アンモニア酸化バクテリア」が発生しアンモニアを亜硝酸にします。亜硝酸の毒性はpHに左右されないため、ほとんどの水槽で問題になりますよ。亜硝酸の濃度が高くなる時期が一番環境が不安定です。そのためセット後2週間目あたりを「魔の2週目」などと呼びます。
- アンモニア、亜硝酸の減少と硝酸の発生
亜硝酸がある程度蓄積されると「亜硝酸酸化バクテリア」が発生し亜硝酸を硝酸にします。このころになると徐々にバクテリア数が増え、アンモニア、亜硝酸の濃度が減り環境が安定してきます。
- 水槽が立ち上がる
「アンモニア、亜硝酸がほとんど検出されなくなる=水槽が立ち上がった」と判断してOKです。あとは定期的に換水をして蓄積する硝酸を取り除いていけばOKですよ。
日数は水槽環境によって大きく異なります。
汚れの少ない環境ほど硝化菌の発生は緩やかに、多いと早く増殖しますよ。

硝化菌はまずアンモニアが無いと増えないので、「有機物の多い環境=硝化菌が増えやすい」と言えますよ。
硝化菌の増えやすさは有機物の量に比例します。
もっと言うと「アンモニアの発生量」です。
水草用のソイルなど「養分の多いソイル」を使用していたり、最初から生体を入れている環境は最初からアンモニアが発生するため、硝化菌が増えやすいです。
逆に養分の少ない砂利系の底床を使ったり、生体を入れていない環境ではアンモニアがあまり発生しないため硝化菌の増殖は緩やかになります。
- 養分の多いソイルを使用
- 最初から生き物を入れている
- 水温が高い
- 砂利系など養分の少ない底床を使っている
- 生き物を入れていない
- 水温が低い
硝化菌の増えやすい環境=アンモニアの発生量が多い環境です。
そのため「硝化菌が十分に増えるまでの間は環境が不安定」ですよ。
養分の多いソイルを使っていたり、最初から生体を入れている方は水槽立ち上げ初期に失敗しやすいので注意しましょう。

マメに換水をするのが一番簡単な対処法です!
硝化作用がしっかりと機能しているかは、水質を調べることでハッキリと分かります。
新しく水槽を立ち上げたら、チェックをして硝化菌が増えているか確認しましょう。

慣れてくるとチェックしなくてもなんとなく分かりますが、初心者の方は一度は計っておきましょう!
「バイコム スターターテストキット」はシンプルで作業がしやすく初心者の方でも簡単に扱えます。
1箱あれば水槽1本の硝化作用の具合を調べることが出来ますよ。
新しく水槽を作る際は1箱用意しておくと良いでしょう。

パックチューブの中に水槽水を入れて色の変化を見るタイプ。
簡単に作業が出来るので初心者の方でも扱いやすいです。
硝化バクテリアの立ち上がりを調べる「アンモニア」「亜硝酸」「硝酸」を調べられるキット。こちらの3つを一度に計測出来るのはとても便利ですよ。
それぞれ3本入った使い切りなので無駄がありません。
参考 スターターテストキットバイコム※分かりやすくするため、硝酸は10分の1の量でグラフにしました
※一例です。実際の各数値の増減は水槽によって微妙に異なります
もう一度こちらの図をみてください。
簡単に計るなら「亜硝酸 → 硝酸」とチェックすると良いです。
亜硝酸は中間で、硝酸は最終的に発生するものなので、「亜硝酸の濃度が低くなる→硝酸が増える」のを確認すればOKと言えます。
全体をチェックするなら「アンモニア→硝酸→亜硝酸」の順にチェックしましょう。
今回はバイコム スターターテストキットを使った方法をご紹介します。
テスト結果の数値はこちらの表と照らし合わせて見てみてくださいね。
NH4(アンモニア)mg/L | |
0~0.25 | OK |
0.5~2 | やや多い |
5~ | 危険 |
NH2(亜硝酸)mg/L | |
~0.5 | OK |
2~5 | やや多い |
10~ | 危険 |
NO3(硝酸)mg/L | |
~2 | とても良い |
5~10 | 良い |
20~45 | やや多い |
45~ | 過多 |
亜硝酸の発生を確認する
もう一度亜硝酸をチェック
- 亜硝酸が増えている → 数日後、再度チェックする(減少を確認するまで続ける)
- 亜硝酸が減っている → STEP3へ進む
亜硝酸をチェックし問題無いか確認後、硝酸をチェックする。
硝酸が増えているようであればOKです

これはバイコムスターターテストキットの説明書に載っているチェック方法です。
セット14日目~20日目あたりにチェックすると良いですよ。

初心者の方は5日~7日間隔でチェックして「アンモニア、亜硝酸の増減」「硝酸の発生と蓄積」を実際に体感すると水槽を立ち上げる感覚を養うことが出来ます!
どれかの数値が危険、過多と出たなら50%程度換水をして取り除きましょう。
硝化菌が十分に増えるまでは換水をマメにすることで調整すると良いです。
「水槽立ち上げ時に入れる丈夫なお魚」のことをパイロットフィッシュと呼びます。
硝化菌を増やすにはアンモニアを発生させることが必要なので、生き物がいた方が都合が良いのです。
しかし、硝化菌が十分に増えるまでは環境が不安定ですよね。
そこで、不安定な環境にもある程度耐えてくれるお魚を入れるわけです。
パイロットフィッシュにはタフで餌をたくさん食べるような種類が向いていますよ。
- カージナルテトラ(ブリード)
- ネオンテトラ
- グローライトテトラ
- ブラックネオンテトラ
- レッドテトラ
- プラティ
- ラスボラ・ヘテロモルファ
- 和金
- アカヒレ
※ブリードとは養殖物のことです
この他にも丈夫なお魚なら大抵はパイロットフィッシュになりますよ。
見た目の好みもあると思いますので、丈夫なお魚の中から気に入った子を選びましょう。
水槽サイズ別に数の目安を作りました。
目安ですので、状況に応じて加減してくださいね。
カージナルテトラの場合 | |
30cm | 2~3匹 |
45cm | 5~10匹 |
60cm | 10~15匹 |
水草用のソイルには肥料分としてアンモニアや硝酸が含まれているものが多いです。
そのため、パイロットフィッシュを入れなくても硝化菌を増やすことが出来ますよ。

肥料に含まれている「窒素」とは主にアンモニアや硝酸のことです!
水草はアンモニアや硝酸を養分として吸収するので水がキレイになるわけですね。
硝化菌を素早く繁殖させるなら、手っ取り早く「バクテリア剤」を入れる方法があります。
もにによってはあまり効果を発揮しないので粗悪品を手に入れないように注意しましょう。
詳しくはこちらの記事を御覧ください。

水槽セットと同時にお魚をいれても大丈夫なの?
絶対に死んでしまうわけではありませんが、管理が難しいのです。
水槽セット初期は環境が不安定のため、お魚に負担の多い時期です。
ですが、お魚が出す汚れが無いとバクテリアが増えません。
そのため、丈夫なお魚を少量づつ入れると良いでしょう。
どれくらいで硝化作用は出来上がるの?
大体1ヶ月くらいです。
順調にいけば1ヶ月もあれば落ち着いてきます。
遅くとも2ヶ月もあれば安定しますよ。
「稼働中の水槽からバクテリアを移植」「バクテリア剤の正しい使用」などで時間を短縮可能です。
セット直後は調子が良かったのに2週目くらいから急に調子が悪くなったよ?
亜硝酸の増加から一気に環境が悪化したのでしょう。
恐らくpHが7付近、もしくは酸性よりの水質なのでしょう。
セット直後から発生するアンモニアはとても毒性が強いのですが、pHが低い環境では毒性を発揮しません。
そのため、酸性よりの環境ではセット直後は調子が良くとも、亜硝酸の発生、増加する時期が一番調子が悪くなります。
亜硝酸が落ち着くまでの間はマメに換水をするなどして対応しましょう。
特にセット直後より大量にお魚を入れている場合に問題になりやすいです。
お魚の数は徐々に増やすようにしましょう。
セット直後でお魚がいないのにアンモニアが発生しているのはなぜ?
ひょっとしてソイルを使っていませんか?
水草用のソイルや肥料には窒素分としてアンモニアや硝酸が含まれています。
そのため、一見、汚れの発生しない環境に見えてもアンモニアや硝酸が検出されますよ。
硝酸が減らないんだけど?
順調に硝化作用が働いている証拠です。
硝酸は硝化作用の最後に生成されるものなので、硝化作用が順調に作用していると常に作られています。
アンモニアの量が多いほど、出来る硝酸も多くなります。
そのため硝酸の出来る量を減らしたいなら「お魚の数を少なくする」「餌の量を減らす」などすると効果的ですよ。
硝酸は多少検出されたとしても問題は少ないです。
45mg/Lを越えているなら換水をして取り除いてくださいね。
少ない数値にキープ出来ると「藻類の少ない環境」になります!
NO3(硝酸)mg/L | |
~2 | とても良い |
5~10 | 良い |
20~45 | やや多い |
45~ | 過多 |
亜硝酸が出てきたタイミングで藻類も生えてきたんだけど関係あるの?
はい。藻類は亜硝酸を養分として有効に活用できます。
「アンモニア」「亜硝酸」「硝酸」はすべて植物の栄養となる窒素分なので水草が吸収します。
しかし、亜硝酸は水草が効率良く利用しづらいようです(と思われます)。
藻類の中には亜硝酸を唯一の窒素源として効率良く利用できるものがいるので、水槽セット初期に多く発生する「茶藻類」や「トロロ昆布状の藻類」は亜硝酸を有効に活用しているはずです。
そのため、亜硝酸の発生時期に藻類が増えますよ。
亜硝酸はある程度毒性が強いので、換水を行い濃度を下げつつ、藻類取り生物達を入れて対応したいですね。


今回は「硝化菌」について詳しく解説しました。
目に見えないバクテリアのことですし、最初はイメージしづらいかと思います。
ですが、キレイなアクアリウムを作るにはコイツら思い馳せることが重要ですよ。

慣れるまでは水質をチェックするようにして、どんな変化が起こっているか把握するようにしましょう!