どうも、プロアクアリストの轟元気(@ordinaryaqua)です。
本記事では「お魚の水合わせ」を解説します。
熱帯魚、海水魚、金魚、メダカ、エビなど生き物を購入したらすぐに水槽へ入れたくなるのが人情ですよね。
でも、そこはちょっと我慢です。
まずは水槽へ入れる前にしっかりと「水合わせ」を行いましょう。
水合わせを行うことで「水温変化」「余分なものの持ち込み」「水質変化」など、水槽移動で発生するリスクを軽減することができます。
水槽間を移動することは生き物にとってストレスとなるだけでなく、水槽の害となるものを持ち込むリスクでもあります。
水合わせを行うことで、これらのリスクを最小限に抑えることができますよ。
そこで今回は、最も丁寧な水合わせ方法である「点滴法」を詳しくご説明します。
初心者の方にも分かりやすく解説していきますので、ぜひご覧ください。
お魚やエビなど生き物が水槽を移動する際の「負担をなるべく少なくする作業」のことです。
また、しっかり行うことで水槽に「害のあるものを持ち込まないようにする作業」でもあります。
購入した生き物を水槽に入れる際は必ず行うようにしましょう。
なお、「移動によるリスク」に対応するための作業ですので、「もともと元気の無い生き物」「水槽のコンディションが悪い」などの状況には対応できないので注意してください。
ここがポイント!

- 水槽移動時の負担を少なくする作業
- 害のあるものを持ち込まないようにする作業
- 生き物、水槽のコンディションを良くすることはできない
- 水温変化を少なくする
- 余分なものを持ち込まない
- 水質変化を少なくする
- 水槽ごとの水温差
- 移動による水温差
これらが原因である水温差を徐々に合わせることでお魚への負担を減らします。
水温の急激な変化によるダメージは大きく、夏季、冬季など移動時に水温が変わりやすい時期は特に注意が必要です。
- 水中の病原菌
- 藻類の粒子
- 貝(スネール)
- プラナリア
これらのいわゆる「害のある生物(藻類)」の侵入を防ぎます。
多くは水ととも水槽へ侵入するので、水合わせをしっかりと行い「生き物」だけを水槽へ移すことで防ぐことができます。
- pH
- 硬度
- 比重
これらの水質の変化によるダメージを少なくします。
実際のところ、極端に水質を調整してキープしている店舗などで購入しない限り上記2つに比べると優先順位は下がります。
「水温変化を少なくする」
「余分なものを持ち込まない」
こちらの2つを意識してしっかり水合わせを行った場合、自然と水質変化によりダメージも軽減されていますよ。
①水温変化
②余分なものを持ち込まないこと
③水質変化
こちらが水合わせ時の優先順位です。
特に①②が重要ですよ。
購入した生き物を5~10L程度入る容器に移しましょう。
作業中に外れないようにしっかりと固定しましょう。
バケツ側のチューブを吸って排水をスタートさせましょう。
コックをひねり、水量を調整します。
基本的に1秒/5滴くらいの量でOKです。
ここまでくれば待っていれば水合わせが終わります。
アミで生き物を掬って水槽へ移動しましょう。
この時、フン、脱皮殻など生き物以外のものが水槽へ入らないようにするとより良いです。
- 水合わせセットの用意
- 点滴の間隔
- 水合わせの時間
- 生き物「だけ」入れる
- 複数のお魚を同時に水合わせ
- 冬季の注意点
- 簡単な水合わせ
点滴法を行うなら「水合わせセット」があると便利です。
安価なパーツで簡単にできますので、ぜひ作ることをおすすめします。
詳しい作り方は後ほど解説していきます。
1秒/5滴くらいの量でOKです。
あまり慎重になると時間がかかってしまい、かえって生き物に負担がかかります。
これくらいのペースで十分ですよ。
多くの熱帯魚、エビなどが「30~60分程度」水合わせをすればOKです。
特別な理由がない限り、長時間の水合わせ作業は生き物に逆に負担がかかってしまいますので止めましょう。
水合わせが完了したら、アミで掬って「生き物だけ」を水槽へ入れましょう。
この時、バケツの中には移動中に出たフンなどの汚れがあるはずです。
これらを水槽に入れないようにすると良いですよ。

このように段々状にケースをセットすると複数の生き物を同時に水合わせすることができます。
最上段のケースに点滴を落とせば、自動で下のケースも水合わせできますよ。
洗面器、プラケースなどを使うと良いでしょう。

勝手にシャンパンタワーと呼んでいます。
寒い時期は水合わせ中に水温が下がってしまうかもしれません。
バケツの中にヒーターをセットできればベストなのですが、予備のヒーターをお持ちでない場合は、「最後に水温合わせ」をして生き物を移動するようにしましょう。
10~15分程度浮かばせておけば水温が合うはずです。
その後、アミで掬って移動させましょう。
お魚購入時の袋を再利用すると便利ですよ。
5cm程度の切れ込みを3箇所程度入れましょう。
このような簡易的な水合わせ方法もあります。
主に「水温変化」に重点をおいた水合わせ方法なので、「余分なものを持ち込まない」「水質変化」には対応できません。
その代わり、作業時間が大きく短縮することができます。
- コンディションの良い水槽(移動元、移動先どちらも)
- コンディションの良い生き物
このように、条件が良い場合は簡易的に水合わせをするだけでも十分な場合がありますよ。

水槽のコンディション、生き物のコンディションに合わせて水合わせ方法を選択できると時間短縮になります!
- シリコンチューブ(1.5~2m程度)
- キスゴム
- プラツナギ
- 一方コック
- アミ
- バケツ
たかかエアーチューブと侮ることなかれ!
絶対に「シリコン100%」のものをおすすめします。
通常のエアーチューブと比べ割高ですが、固くならず、ずっと使えます。
固くなったエアーチューブは外れやすいため、水合わせ中に外れて水浸しなんてトラブルもシリコンチューブを使えば予防することができます。
水槽にチューブを固定するために必要です。
ゴムが劣化してくると剥がれやすくなりますので、1~2年程度で交換しましょう。
これを着けないとキスゴムが外れやすくなってしまうので作業効率大幅ダウン!
地味ですが大切なパーツです。
必ず着けましょう。
本来はエアーレーションの量を調整するものですが、水合わせにも使えます。
コックをひねるだけで簡単に水量を調整できるので、初心者の方でも簡単に取り扱えますよ。
金属製なのでちょっと重みがあります。
この重みが絶妙に水合わせチューブを安定させてくれますよ。
バケツの中は丸いので意外と生き物を捕まえづらいです。
逃げ回ると余計な体力を使うのでサッと捕まえたいところ。
こちらの「スドー スリムネット しなりシリーズ」はとても使いやすいアミなので、捕まえやすいですよ。
5~10L程度の容量のものが使いやすいです。
換水など、普段のメンテナンス時に使っているもので十分かと思います。
このように両端にそれぞれつなぐだけ!
材料さえ揃っていれば30秒もかからないでしょう!

時間のある時に作っておけば一生使えますよ!
熱帯魚、海水魚、金魚、メダカ、エビなど水棲生物全般にとって水合わせはメリットがあります。
水温変化、水質変化に強い生き物であっても水合わせをすることで「余分なものを持ち込まない」という大きなメリットがありますよ。
そのため、特に理由が無いならしっかりと水合わせを行ってから生き物を水槽へ入れましょう。
- 淡水に住む「貝」の仲間
- 水棲カメ
これらの仲間は特に水合わせを行わなくても大丈夫です。
飼育水で軽く洗ってから水槽へ移してあげましょう。
[fish title=”MEMO”]水温が極端に違う場合、水温合わせはしっかりと行いましょう。[/fish]1時間、3時間、5時間と長時間水合わせをすればそれだけ生き物への負担が減るように感じますが実際のところ、ほとんど効果は変わりません。
冬季など水温が下がりやすい状況では、逆に調子を崩してしまうこともありますので、長くても1時間程度で水槽へ移してあげましょう。
- 極端に水温が違う(10℃以上)
- とても水質に敏感な生き物
- ちょっとした変化のダメージで死んでしまうような状態
このような特殊なケースの場合、長時間の水合わせが有効な場合もあります。
多くの場合、プロショップでの業務などで海外からの荷受けする場合などに限られますよ。

そもそも、極めて慎重な水合わせが必要な状態の生き物を販売するのはNGだと考えています!
お魚が菌、寄生虫を保有している場合、水槽への侵入を防ぐことはできません。
「白点病」「尾腐れ病」など明らかに症状として出ている場合は、水槽への導入は見送りましょう。
問題は、感染しているけれど「無症状」の場合です。
見た目から判断することはできませんので、新しい生き物を水槽導入する際は、どんなに丁寧に管理された生き物であってもギャンブル要素があります。
いわゆる「キャリア」と呼ばれる状態です。
感染しているけれど、免疫で抑えているため症状が出ないことを言います。
病気の症状は無いけれど、他の生き物に感染させてしまう恐れがあります。
例えば同じネオンテトラであっても、産地が違えば持っている抗体に違いが出ます。
細かくいうと、流通業者が違えばその過程で違う抗体を手に入れる可能性がありますよ。
病気の原因とな病原菌、寄生虫は実はかなりの種類があり、水槽ごとに生息しているものが違うことが多いのです。
生き物が水槽を移動すると、どんなに丁寧に水合わせをしたとしても、一緒に病原菌、寄生虫も移動します。
そのため、今の水槽にいる生き物の抗体で対処できないものが入ってきた場合、病気が発生するリスクがあります。

「新しくお魚を入れたら急に水槽の調子がおかしくなった」というのはこの辺に理由があります。
持っている抗体の違いから、同じお魚であっても水槽に追加する際はよく注意しましょう。
もし、コンディションが悪い(生き物、水槽どちらも)のなら導入は見送ったほうが無難です。
本来であれば、免疫で問題無いような場合であっても、コンディションが悪く免疫が下がっていることによって病気になってしまうかもしれませんよ。

違う店舗で購入した場合などは特に注意したほうが良いでしょう!
- 生き物のコンディション
- 水槽のコンディション
など、状況しだいになりますが、水合わせをしなくても問題無いこともあります。
例えば、自宅で複数の水槽をキープしている方など、自分で管理している水槽同士で生き物を移動する際などは結構大丈夫なものですよ。

プロが水合わせをしないことがあるのは、この当たりの事情をしっかり把握しているからです。
今まさに酸欠で死んでしまいそうなお魚など、急を要する場合は水合わせをせずにすぐに水槽へ移しましょう。
水合わせをしないことのデメリットはもちろんありますが、水合わせを待っている途中で死んでしまっては意味がありません。
[fish title=”MEMO”]「金魚掬い」で取った弱った金魚などがこのケースに当たることが多いです。[/fish]今回は「お魚の水合わせ」を解説しました。
時間のかかる作業ですが、「水合わせセット」があれば半自動で行うことができます。
しっかりと水合わせをして、予防できるところは予防しましょう。
すべてのリスクに対応できる訳ではありませんが、やらないよりはずっと良いですよ!

お魚飼育の基本作業です!