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大磯砂の酸処理方法 ー酸処理の必要性、処理後の水質変化を詳しく解説ー

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本記事では大磯砂を酸処理する方法を解説します。

大磯砂は最も流通量の多い底床材ですが残念ながらそのまま使うには難があります。

もともと海で採取される砂利なので、未処理の状態では淡水の生き物、水草の育成には不向きですよ。

しかし大磯砂は「安いこと」「何度も使えること」から多くのアクアリウムショップで使われています。

酸処理をすることで「永く使える優秀な底床」になりますので、大磯砂で水槽を作りたい方は本記事をぜひご覧ください。

この記事の著者
轟元気

プロアクアリスト

轟元気

とどろきげんき

プロフィール

業界歴19年の中堅。現在は有限会社エイチ・ツーに所属し埼玉県坂戸市にあるアクアリウムショップ「e-scape」の店長をしています。本ブログ、Ordinary-Aquariumでは「水草水槽の知識」を中心に今までの経験を基にした実践的な知識、技術を初心者の方にも分かりやすく解説しています。プロフィール詳細リンク、転載、引用について

大磯砂とは?

大磯砂

黒、白、灰色、青灰色など様々な種類の石が混じる砂利です。

かつて大磯海岸などで採取されていたのでこの名前が定着しました。

現在では海外の海岸(主に東南アジア)で採取されたものが流通しています。

以前よりも流通量が少なくなり貴重な底床になりつつあります。

元気
元気

初めての水槽の砂利は大磯砂だったという方が多かったのではないでしょうか?

なぜ酸処理をするの?

貝殻、サンゴの骨

大磯砂は海で採取されるため、淡水の生き物、水草を育成するのに不都合な成分(貝殻やサンゴの骨格など)が含まれています。

水槽で使ううちに徐々に取り除かれ問題無く使用できるようになるのですが、最初から良い環境を作るために必要なのもの、それが「酸処理」です。

酸処理をすることで「pH」「TDS」という指標を淡水の生物が生活しやすいところまで調整するのが目的ですよ。

水質変化は後ほど詳しく解説します。

大磯砂の酸処理は絶対必要なの?

小難しいお話になりますが、軟水、弱酸性の水質を好む生き物や水草を育てるなら必要ですね。

未処理の状態から水槽で使うと1~3ヶ月程度は調子の悪い状態が続きますので、酸処理をしてから使うほうが良いでしょう。

MEMO

汽水魚や海水魚など弱アルカリの水質を好むお魚なら未処理でも問題無く飼育できます。

大磯砂を酸処理する方法

大磯砂

サンポールに漬ける⇒よく洗う⇒天日干し

こちらが簡単な手順です。ざっくり4~5日程度かかります。

これから必要なもの、作業手順など詳しく解説していきます。

必要なもの

  • 容器
  • サンポール
  • ビニール手袋

容器

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こんな感じの横に広いケースがおすすめです。

大磯砂を薄く広げることでサンポール溶液が全体に行き渡りやすくなります。

バケツでは溶液と砂が上手く混ざらず酸処理に時間がかかるのでおすすめしません。

持ち上がらないと作業が大変なのであまり入れすぎないようにしましょう。

サンポール

強力な酸なら酸処理に利用できるのですが、なかでもサンポールは手に入れやすいのでおすすめです。

ドラッグストア、ホームセンターなどで簡単に手に入れることができます。

強酸性のため、アルカリ性のもの、硫化物を含むものと混ざると塩素ガス、硫化水素ガスなどが発生して大変危険です。

絶対に他の薬品と混ぜないようにしましょう。

サンポールの成分
  • 塩酸 9.5%
  • 界面活性剤 (アルキルトリメチルアンモニウム塩)
  • 洗浄助剤
  • 増粘剤
  • 香料
  • 着色剤

含まれている塩酸が大磯砂に含まれる余分なものを溶かして処理するという感じです。

洗剤のため界面活性剤、香料が含まれることから酸処理すると泡立ち、匂いが立ち込めます。

普通の水道水で十分です。

サンポールが濃いほうがより効くので、少量の大磯砂を酸処理するなら水は使わなくても良いでしょう。

ビニール手袋

必ず必要なものではありませんが気になる方は手袋をしましょう。

サンポールは酸度の高い薬品なので手につくと荒れますよ。

酸処理の手順

容器に大磯砂を入れる
ひたひた

容器に大磯砂と水を入れましょう。

水は砂が隠れる程度で十分です。

サンポールを入れる
サンポールを入れる

サンポールを入れると石と反応してシュワシュワと泡が出ます。

一晩放置
一晩放置

風通しの良い場所で一晩程度放置して反応が終わるを待ちましょう。

混ぜる
混ぜる

軽く混ぜてみて泡が出ないか確認しましょう。

砂からシュワシュワと泡が出るなら酸処理はまだ終わっていません。

もう一晩待ってみましょう。

※水面に浮かんでいる泡ではありません

よく洗う
よく洗う

流水でよく洗います。

バケツに少量づつ移しながら洗うと手早く洗えますよ。

泡が出てこなくなるまで丁寧に洗いましょう。

さらす

洗い終わったら水道水を入れ1~2晩程度さらします。

天日干し
天日干し

天日干しをして匂い取りをします。

必ず必要な工程ではありませんが、天日干しをすることでサンポール特有の匂いを軽減できますよ。

完了!

水槽制作をお楽しみください!

サンポールの濃度

1L/100mL程度を目安にサンポールを入れる

これくらいを目安に入れましょう。

濃いほうがより効果が高いので、濃くなる分には問題は無いでしょう。

匂いが残る

よく洗い、天日干しをしたとしてもサンポールの匂いが多少残ります。

匂いが残っている程度であれば生き物に影響はありませんのでそのまま水槽で使えますよ。

匂いは時間経過と共に徐々に薄まっていきます。

注意

ぬるぬる(界面活性剤)は綺麗に洗い流さないと生き物に害があります。

大磯砂は初心者には不向きかもしれない

  • 多くの熱帯魚が弱酸性を好む
  • 水草は弱酸性、軟水を好む

このような状況から大磯砂はあまり初心者向きとは言えないでしょう。

見た目にこだわりが無いのなら他の底床で水槽を作る方が簡単だと思いますよ。

おすすめの底床

こちらの記事でおすすめの底床をご紹介しています。

底床選びお悩みの方はぜひご覧ください。

大磯砂のメリット

  • 安い
  • ずっと使える
  • 処理後は優秀な底床

こちらが大磯砂のメリット。

店舗でほとんどの水槽に大磯砂が使われているのはこのためです。

1度酸処理をした大磯砂は水質変化が少ない優秀な底床になります。

長く使える優秀な底床お探しの方は大磯砂を酸処理すると良いですよ。

酸処理後の水質変化を比較

  • PH:6.0
  • 全硬度(CaCO3換算):40mg/L
  • TDS:54ppm
  • ↑この水に72時間さらす

こちらの条件にて「未処理」「1回酸処理したもの」の水質変化を記録しました。

この水は私の自宅の水道水をPH6.0に調整したものです。

状態色変化pH変化硬度変化TDS変化
未処理基準+1.9+10mg/L+?(測定不能)
酸処理変化無し+0.3+10mg/L+106ppm
大磯砂の水質変化

こちらが結果です。

未処理のものでもPH、硬度は特に問題ありませんが、TDSが測定不能なほど高い数値になりました。

今回は硬度しか計測していないためどんな成分によってTDSが高くなっているのか不明ですが、とにかく大磯砂には色々なものが混じっているようです。

TDSは酸処理をすれば落ち着くので酸で溶ける「何か」のようですね。

TDSとは

「水に溶けている電気を通すモノの量」のこと。簡単に言うと、水にどれだけのものが溶けているかの指標です。

計測につかったもの

こちらの記事で使ったものと同じものを使いました。

どれも普段から愛用しているアイテムなので、興味のある方はご覧ください。

「計測につかったもの」へ飛ぶン

酸処理の注意点

  • 混ぜるな危険
  • サンポールが手につかないようにする
  • 換気の良い場所で作業する

混ぜるな危険

サンポールは強酸性の洗剤のため、アルカリ性のもの(キッチンハイターなど)、硫化物を含むものと混ぜると塩素ガス、硫化水素ガスなどが発生して大変危険です。

絶対にアルカリ性のもの、硫化物を含むものと混ぜないでください。

サンポールが手につかないようにする

手につくと荒れるのでご注意ください。

気になる方はゴム手袋をしましょう。

換気の良い場所で作業する

  • サンポールの匂い
  • 石との反応でガス(CO2)が出る

以上のことから換気の良い場所で作業することをおすすめします。

室内で作業すると部屋中がサンポールの香りに包まれます。

元気
元気

どことなくトイレを連想させる匂いなので、、

石の酸処理

青龍石系の石

青龍石系の石など、レイアウトに使う石も同様の方法で酸処理をすることができます。

こちらの記事で詳しく解説しましたので興味のある方はぜひご覧ください。

まとめ

今回は「大磯砂の酸処理」を解説しました。

ちょっと手間ですが、1度酸処理した大磯砂は優秀な底床です。

洗えばずっと使えますので重宝しますよ!

元気
元気

酸処理が面倒なら他の底床を使いましょう!