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【肥料に詳しくなろう!】水草に必要な14の必須栄養素

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本記事では「水草に必要な14の必須栄養素」を解説します。

水草水槽を管理する上で1番難しいのは「肥料を使いこなすこと」だと私は考えています。

そこで今回は水草がどのような栄養素を必要としているのかを解説していきます。

「どんな栄養素があるのか」「栄養素の機能」「水槽内で不足しやすい7つの栄養素」「欠乏症状早見表」など、掘り下げてご紹介します。

実は最近の水草用品は優れているので、肥料を使いこなすことをしなくてもある程度綺麗な水草水槽を作ることができます。

やや上級者向けの内容ですがぜひご覧ください。

初心者の方は

初心者の方はカリウム肥料からチャレンジされると失敗が少ないですので、まずはこちらの記事をご覧ください!

この記事の著者
轟元気

プロアクアリスト

轟元気

とどろきげんき

プロフィール

業界歴15年の中堅。現在は埼玉県坂戸市にあるアクアリウムショップ「e-scape」の店長をしています。本ブログ、Ordinary-Aquariumでは「水草水槽の知識」を中心に今までの経験を基にした実践的な知識、技術を初心者の方にも分かりやすく解説していきます。プロフィール詳細リンク、転載、引用について

水草に必要な5つの要素

  • CO2
  • 水質
  • 肥料
  • 温度

こちらが水草には成長するのに欠かせない「5つの要素」です。

肥料が本記事で解説する「必須栄養素」に当たります。

肥料が水中に十分あったとしても、

  • 暗い
  • CO2が足りない
  • 水質が合っていない

など、他の要素に問題があれば水草は肥料を消費しません。

そのため、肥料添加は他の要素を確認してから「最後」に当たるようにしましょう。

5つの要素は水草育成の基礎となるお話です。

こちらの記事で詳しく解説しましたのでまずはこちらからご覧ください。

元気
元気

闇雲に肥料を入れるのは厳禁です!

水草に必要な14の必須栄養素

必須栄養素とは「植物が生きていくために外部から取り込んで代謝する必要があるもの」のことです。

人間がご飯を食べないと生きていけないのと同じですね。

必須栄養素は欠乏状態が長く続くと大きく調子を崩し最悪枯れてしまいます。

これも人間と一緒ですね。食べないと死ぬ。

必須栄養素は要求量に応じて、多量要素、微量要素に分けられます。

そして、多量要素は要求量に応じてさらに二つのグループに分かれますよ。

多量一次要素

  • 炭素(C)
  • 水素(H)
  • 酸素(O)
  • 窒素(N)
  • リン(P)
  • カリウム(K)

多量二次要素

  • カルシウム(Ca)
  • 硫黄(S)
  • マグネシウム(Mg)

微量要素

  • ホウ素(H)
  • 塩素(Cl)
  • マンガン(Mn)
  • 鉄(Fe)
  • 亜鉛(Zn)
  • 銅(Cu)
  • モリブデン(Mo)
  • ニッケル(N)

無機栄養=肥料

  • 窒素(N)
  • リン(P)
  • カリウム(K)

14の必須栄養素のうち、こちらの3つを除いたものを「無機栄養」と呼びます。

基本的に植物は水に溶けている無機栄養しか吸収できないので、肥料として水草に与えるもの「11の無機栄養素」ということです。

ちなみに炭素、水素、酸素は水とCO2から取り込んでいるので基本的に与える必要はありません。

有機物
  • 複雑な化合物が多い

炭素を中心にできているもの。 炭素は色んな物質とくっつきやすいので、紙とかプラスチックとか石油とか魚とか草とか、たーくさんあります。いま確認されているだけで1000万種以上あるみたいです。

無機物
  • 単純な化合物が多い

有機物以外の物質全般です。カルシウムとか過酸化水素(オキシドールの原料)とかリチウムとかですね。~酸とか~塩(シオではなくエン)とか金属っぽい名前のものは大体無機物です。ダイヤモンドや二酸化炭素のように炭素を含んでいても例外的に無機物とするものもありますよ。

人間も食べた物をそのままエネルギーとして吸収できないので、口で咀嚼→各酵素でさらに分解→小さな分子にして吸収していますよね。

植物も同じように、あまり複雑な化合物はそのままの状態では栄養として取り込めません。

植物は消化器を持たないので、自分で有機物を吸収できる大きさまで小さくする機能を持っていません。

そのため土壌、水中にある有機物をバクテリアが分解し無機化することによって初めて植物が吸収できるようになります。

肥料の三要素

  • 窒素(N)
  • リン(P)
  • カリウム(K)

多量一次要素より炭素、水素、酸素を除いたこちらの3つは特に重要な要素のため「肥料の三要素」と呼びます。

元気
元気

「この肥料にはNPKが入っている」なんて言い方をします。

必須栄養素の機能

必須栄養素の機能を表にまとめてみました。

特に水槽で重要になる部分は赤字にしましたので、基本的には赤字部分を気にしていただければOKです(その他は読み飛ばしても全然良いと思います)。

元気
元気

情報量が多いのでPCで見ていただいた方が良いかも。

三要素

要素名機能欠乏症状過剰症状
窒素・原形質の40~50%は窒素化合物
・もっとも必要とされる要素
・葉緑素や酵素等様々な形で利用される
・葉や茎を大きく太く成長させる
・光合成量は窒素量に比例する
・下葉から黄色になる(下葉が落ちる)
・植物全体が黄色くなる
・根が短い、成長が遅い
・生長点の葉が小さくなる
・葉が濃い緑色になる
・病気や虫への抵抗力が弱まる
・ヒョロヒョロとした姿になる
リン・DNAや細胞膜、ATP等の原料になる
・代謝の早い部位に多く存在する
・生長、発芽、開花に重要とされる
・葉に光沢が無くなる(ツヤが無い)
・新芽やランナーの発生や伸びが鈍化
・生長点の葉が小さくなる
・過剰症状はあまり出ない
・亜鉛、鉄、マグネシウム欠乏を招く
カリウム・体内のタンパク質や炭水化物の移動を助ける
・浸透圧調整機能を持つ
・光合成に必要なクロロフィル前駆体の合成に関わる(低光量下ではとくに大切)
・下葉から白化する
・葉脈が黄色になる(クロロシス)
・葉にしわがよる、縁が波打ったようになる
・窒素と同時過剰吸収しやすい
・鉄、マグネシウム、カルシウムの吸収を阻害する

多量二次要素

要素名機能欠乏症状過剰症状
カルシウム・他の栄養素を運搬する
・細胞内の情報伝達をする
・代謝時に発生する有機酸の中和
・生長点の白化
・根の成長が遅くなる(太く細根の少ない状態)
・根腐れしやすくなる
・過剰症状はあまりでない
・リン、マグネシウム、カリウムの吸収を阻害する
※水槽内に多量にある場合、pHを上昇させる
マグネシウム・葉緑素を構成している
・酵素の活性剤
・体内のリンの移動を助ける
・下葉から黄色になる
・葉脈以外が黄色になる(葉脈は緑のまま)
・過剰症状はあまりでない
・カルシウム、カリウムの吸収を阻害する
硫黄・アミノ酸、タンパク質の元・下葉から黄色になる(下葉が落ちる)
・植物全体が黄色くなる
・過剰症状はあまりでない

微量要素

要素名機能欠乏症状過剰症状
ホウ素・細胞壁の生成に関わる
・糖代謝に関わる
・生長点の白化、黄化
・茎がパキパキと折れる
・過剰症状はあまりでない
塩素・光合成に関り、光化学系IIの必須因子・新芽がクッシャとした感じになる
・根が太く短くなる
・過剰症状はあまりでない
マンガン・光合成おける酵素の中心要素・葉脈間に白い斑点のようなものがでる
・葉が黄色く変色する(変な模様みたいに見えることも)
・症状は光合成の盛んな葉に出る
・過剰症状はあまりでない
・葉緑素の形成に関わる
・体内の酸素の移動を助ける
・酵素の活性剤
・生長点の白化、黄化する・リン、カリウム、銅、亜鉛、モリブデン、マンガン等の吸収を阻害する
亜鉛・植物ホルモンの代謝に関わる
・タンパク質の合成に関わる
・新芽の展開が遅くなる
・節間が短くなり、小さな葉が密集したようになる
・鉄、銅、モリブデン等の吸収を阻害する
・光合成や呼吸に関わる酵素を構成する・生長点の白化・鉄、銅、亜鉛等の吸収を阻害する
・根がぜんぜん伸びなくなる
モリブデン・硫酸還元酵素(硝酸を窒素として利用する)を構成する・窒素代謝が阻害され窒素欠乏になる・鉄、銅、亜鉛等の吸収を阻害する
ニッケル・尿素を分解する酵素の活性剤・葉の先端から黄化・過剰症状はあまりでない

水槽内で不足しやすい7つの栄養素

水草育成で特に意識すべき栄養素を掘り下げて解説します。

肥料添加は主にこちらの7つの成分を水槽に添加すると良いでしょう。

タップすると詳しい説明箇所にジャンプします。

窒素

もっとも必要とされる要素で植物の様々な部分で利用されます。

「窒素量=水草の成長」と言い換えることもできるほど重要です。

水草を元気に育てるには活発に光合成をさせることが重要ですが、窒素が十分に無いと光合成量が減ってしまい元気が無くなってしまいます。

窒素は植物の体の中でアミノ酸になってタンパク質に変わっていきます。

ちなみに光合成に絡んでアミノ酸に変わっていくので、光合成が満足に行えない環境だと窒素をあまり消費しないので注意しましょう。

「水槽に過剰にある」とされることが多いですが、水草水槽においては欠乏症状がでることが少なくありません。

本格的な水草水槽では基本的に生体が出すアンモニア、ソイルに含まれる窒素分だけでは不十分だと思って頂いて良いです。

もちろん入れ過ぎは藻類の発生に直結するので注意が必要ですが、欠乏するとみるみる元気がなくなるので適量を守って添加しましょう。

ポイント!

下葉から黄色くなる→新芽も黄色くなる→下葉が落ちる→葉がほとんど無くなる

これが窒素不足の典型的なパターンです。

下葉の色が悪くなったら窒素不足を疑いましょう。

窒素肥料には「アンモニア態窒素」「硝酸態窒素」の2種類があります。

アンモニア態窒素はソイルに吸着されるので土壌内に長く留まる傾向が強いです。

硝酸態窒素はソイルが吸着して留めておけないので換水をすると水槽外へ排出されてしまいます。

植物によって好む窒素態が違います。

市販の窒素系肥料にはアンモニア態窒素と硝酸態窒素がバランス良く含まれているのでそこまで気にしなくても良いと思います。

リン

主に開花に関わることが多いためかアクアリウムではぞんざいに扱われています。

黒髭苔の発生原因として悪者扱いされていますが、鉄分と強く結びつくため黒いソイル(鉄の含有量が多い)を使っていると低濃度になることが多いです。

というか、お魚をたくさん飼育している水槽以外では、過剰になることは稀です。

また、リン除去剤は化学ろ材の中ではポピュラーなので、藻類対策使われることが多く最近では欠乏症状がでることの方が多いと感じています。

とはいえ入れ過ぎは藻類の原因になりますので、少なめを意識して添加すると良いでしょう。

ポイント!

不足すると新芽の展開やランナーの伸びが鈍化します。

何もしていないのに生長点が小さくなり出したらリン不足を疑ったほうが良いかも。

鉄があるとリンを吸着します。

古くから海水魚を飼育している方がリン対策として鉄くぎを水槽に仕込むのはそのためですね。

ほぼ濃度を0にできますよ。

カリウム

記二つと違い体を構成しているというよりは溶液中に存在し浸透圧調整等の体の調子を整える要素です。

「水道水にはカリウムが少なく換水では補えないから3要素では一番大事」

とされています。

水草水槽を管理していると最も早く欠乏症状になる元素ですよ。

ムブ
ムブ

カリウムを入れたら藻類が消えた!

このような意見が多いのはそのためです。

カリウム施肥によりバランスが改善され、余っていた要素が減り好結果に繋がったのでしょう。

しかし、カリウムは藻類の直接的な要因になりずらいので過剰に施肥されることが多く、最近は欠乏症状でお困りの方よりも過剰症状で悩む方が多い印象を受けます。

注意

一度過剰症状が出たら肥料添加をストップしカリウム切れを待ってから通常管理に戻る必要があります。それまで鉄、マグネシウム、カルシウムの欠乏症状に苦しむことになるのでカリウムの過剰施肥には十分に気を付けてください。

ポイント!

不足すると下葉から症状が現れて白化、黄化します。

葉脈の色が薄くなったり、葉にシワがよったり、葉の縁が波打ってきたらカリウム不足を疑いましょう。

カルシウム

栄養素の運搬や細胞内の情報伝達を助けるのが主な役割です。

人間の骨格のように細胞同士を結び付けている要素です。

水草にはそれほど必要では無いとされていましたが、時折、欠乏症状が出ることが分かりました。

カルシウムを含んでいる肥料はあまり無いので、対応が難しい面がありますが水道水に含まれているので換水をして補うと良いでしょう。

ポイント!

不足すると生長点が白化し根の調子が悪くなります。

カルシウムは体の中をほとんど移動しないので代謝の早い部位に症状が現れます。

マグネシウム

葉緑素を構成し酵素の活性剤としての機能があります。

生きる為に必要な酵素はマグネシウムが不足すると上手に働けなくなるので地味ながら大切な元素です。

比較的水槽内で欠乏しやすい元素で、カリウムの次に添加したい栄養素ですよ。

ポイント!

不足すると下葉から黄色くなっていきやがて全体の葉が黄色くなります。

カリウム不足や鉄不足と間違えやすいですが、マグネシウム欠乏は葉脈は緑色のままなのが特徴です。

ホウ素

細胞壁の生成、糖代謝に関わる元素です。

ソイルを使用している場合、セット初期から不足することは稀ですが長期で維持をする場合、必ず不足するので添加して補う必要があります。

特に有茎草を多用している水槽で不足しやすいので、トリミング後の生長が鈍いなどの症状が出たら添加を検討しましょう。

ポイント!

不足すると生長点が白化、黄化します。

また、有茎草の下部の茎がパキパキと折れるような症状がでます。

マグネシウム同様葉緑素に関わり、酵素の活性剤として機能しています。

水中では不安定なので不足しがちな元素です。

定期的にまとめて施肥することが難しい元素のため、まめな肥料添加を心掛けましょう。

赤くするには鉄が大事!とよく言われますが光やCO2濃度など他にも気にする点があります。

そのためまずは肥料以外の部分から対処した方が良いですよ。

あくまで鉄不足は赤くならない要因の内の1つなので。

ポイント!

不足すると生長点が白化、黄化します。

生長点にのみ症状がでる場合は鉄不足を疑いましょう。

ホウ素、鉄以外の微量元素

それぞれ大切な元素なのは分かるのですが、水草の調子が落ちてもいまいちどの欠乏症状なのかということがはっきりしません。

幸い、微量元素系肥料にはバランス良く各微量元素が含まれているので、定期的に施肥していれば不足症状がでるようなことはないでしょう。

また、原因不明の成長不良みたいな症状がでている場合は、微量元素の何かが不足しているかもしれません。

微量元素系肥料は「効いてる感」が無いのでついついサボりがちですが、きっちり入れといた方が無難ですよ。

欠乏症状早見表

欠乏症状早見表

簡易的な欠乏症状チェック表を作ってみました。

水草の種類によって微妙に症状が違うので断定するのは難しいのですが、こちらの表を使うとなんとなく足りない元素が見えてきます。

症状が複合している場合も多いので、1番疑わしいところからクリアにしていくのが良いかと思いますよ。

注意

光が足りない、CO2が足りない場合でも同様の症状がでます。まずは肥料以外を疑うようにして肥料添加は最後に行いましょう。

元気
元気

水草が元気でないと肥料を吸収しません。まずは肥料以外を調整してから添加するようにしないと藻類が出てしまうかもしれませんよ!

肥料の使い方

実際の肥料の使い方はこちらの記事で詳しく解説しました。

本当のところは水槽毎に違うという結論になってしまうのですが、それではなんの参考にもならないと思いますので、なるべく具体的に、それぞれの水槽環境に合うように工夫しました。

肥料を使う前にぜひご覧ください。

まとめ

今回は「水草に必要な必須栄養素」を解説しました。

水草水槽で一番難しいのは「肥料を使いこなす事」だと私は考えています。

肥料不足じゃなくて「CO2が少なかった」「点灯時間が短かった」みたいなケースも多いので、肥料のことを気にするのは1番最後にしましょう!

元気
元気

肥料を使いこなせるようになるとグッと水草のコンディションが上がりますので、少しづつ肥料添加にチャレンジしてみてください!